富士山 関 浩(宇治久世)  PDF

第3回
標高差595m、3時間かけ山小屋到着

六合目2390m~七合目2700m
標高差310m

 六合目に向けてジグザグな登山道を尾根づたいに登る途中にコメツガやイワツメクサが見られるが、しだいに森林限界となり、ゴツゴツした岩の道に変わっていく。富士登山に関するアドバイスや天気に関する情報などを提供している富士山安全指導センター、富士吉田富士山警備派出所があるのが標高2390m、ここから六合目に入る。安全指導センターから10分ほどで、下山道との合流点、標高2400mに到着する(写真①)。登山道は右上に登っていくが、帰りは左側の下山道からおりてくることになる。背負ったリュックの重量が9㎏、朝購入した500㏄飲料水2本で計10㎏の重さになり、あれもこれもと持ってきすぎだと少し後悔する。進むにつれ段々先頭のペースについていけず、最後尾グループに下がってしまった。雨は降り続き、リュックカバーの中のペットボトルが取り出しにくく、休憩時しか水分補給ができない。レインウエア内は暑く汗でべとついたが、そうかといって緩めるとすぐに寒くなり、この繰り返しだった。気温については標高が1000m上がると約6度低下する。山麓が30℃の時、5合目では約16℃、頂上では7℃まで下がるのだ。

七合目2700m~一泊目の山小屋2900m

 「花小屋」2700mから七合目に入る。この七合目手前から岩場がはじまるのだ。岩場の左右には鉄の鎖が設置されているが、これは道を示すもので、引っ張るものではなく、中にはぐらぐらして外れてしまうものもあるので要注意だ(写真②)。岩場ではストックはあまり役には立たず、後続の人に危険なので収めることにした。また、岩に足をかけよいしょと直立したりするとリュックの重みで重心が後ろにかかり、転倒すれば、自分にも、後続にも大きな被害を与える危険がある。疲れて踏ん張りがきかぬとなおさらだ、手を使う方がはるかに安全だ。
 岩場が続くが、目立つ赤い鳥居が見えてきたら、七合目も後半に入った。18時40分(所要時間3時間10分)、1泊目の鳥居荘2900mに到着した。
 1泊2食7560円、素泊まり5500円、250人収容。休む間もなく広間に座卓が並べられ、とてもじゃないが早い夕食、定番のカレーライス、あちこちより、お代わりの声がするが私は食欲がわかぬ、アサヒスーパードライ(700円)、1本さえ胃部につかえて飲みにくい。
 19時半ごろに消灯するが、常日頃、遅い就寝の私にとって、疲れていても寝られたものではない。寝室は2段式、スペースは畳半畳、3人に2枚のかけ布団、少し動けば他人に触れてしまう。おまけにこれが大きな問題だったが、下着が濡れて気持ちが悪いこと甚だしい。外部からの雨の侵入はまずなかったが、下着に吸収した大量の汗が渇かずへばりつき、気持ちが悪い。脱衣場はなく、替えの下着を入れたリュックは離れており、寝ようとする人をガサゴソと邪魔するわけにはいかぬ。すでに消灯してしまっているので、そのまま我慢することにした。
 寝られないまま、23時半に起床の声がかかり、ざわざわと準備の物音が30分も続いたが、突然静かになった。我々、2泊組7人を残し大部分はこれから夜を徹して登り、頂上でご来光を狙う人たちだ。天候もよく、期待どおりの日の出が望めそうだ。下着もやっと体温で乾き、別の布団にもぐりこみ、4時間ぐらいは睡眠がとれた。

写真①
右上が登山道、左が下山道。登頂を果たし晴れやかな下山者

写真②
七合目より岩場がはじまる

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