知っておきたい 医院のための雇用管理 7  PDF

社会保険労務士 桂 好志郎

私傷病による長期欠勤者への対応

 昨年の10月に採用した職員から、私傷病によりしばらく休みたいと申し出がありました。年休で10日間は対応できますが、それが長期になる場合は、他の職員の協力でしばらく対応するにしても限界があります。業務に影響がでます。どのように対応すればいいのでしょうか。
 ◇傷病休職制度で対応するのが一般的です
 相当期間、ある職員について労務させることが不能または不適当な事由、困難である事由が生じた場合に、労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除することを一般的には休職といいます。
 使用者は、このような休職事由が生じた場合、労働契約や就業規則などにもとづいて、必要な限りにおいて職員に休職を命じることができます。ときには労働者との合意によってなされることもあります。休職には目的や内容を異にするさまざまな制度が存在しますが、今回のようなケースは、退職を猶予して傷病の回復を待つ傷病休職制度で対応するのが一般的です。一種の解雇猶予の制度であり、労働者を保護する制度です。
 休職の種類 例えば
 依頼休職:「海外留学」など私的な目的を遂行することを理由に
 公務休職:公務に就任したことを理由に
 起訴休職:刑事事件で起訴された場合、未決拘留期間などの待機を目的に
 出向休職:異動命令による他社への出向に伴う不就労を理由に
 ◇休職制度を設けるかどうかは自由
 休職制度は、法令に基づくものではありません。あくまで制度を設けるかどうかは医院の自由です。これを設けている医院は、原則としてこの制度に基づいた手続を経なければなりません。業務外の傷病により欠勤が一定期間(数カ月)に及んだときに行われますが、休職の要件、休職期間(この長さは勤続年数に応じて定められることが多い)、休職期間中の賃金(本人の都合による休職の場合は賃金が支給されないのが一般的)、勤続年数の算定等を医院の裁量で決めることになります。
 ◇回復せず復職できないときは
 この期間中に傷病が回復し就労が可能となったとき、休職事由が存在しなければ休職は終了し、復職することになります。休職期間が満了しても回復せず復職できない時は、本来なら直ちに解雇事由となるべきところを一定の猶予期間を置いて回復状態を待つという制度の満了ですから、休職期間満了時に自然退職または解雇となります。
 ◇復職上の注意点
 休職事由が消滅し、原則として従前の業務を通常の程度に行える状態になった場合は復職となりますが、そのときに、復職の要件たる「治癒」が備わったか否かが問題になることがありますので、就業規則において、「治癒とは休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復することをいう」と規定しておくことが望ましいと思います。回復したかどうかは使用者が判断しなければなりません。
 また復職にあたって職員本人の主張どおり原職復帰させたとしても、十分に回復しないまま復職させることにより、病気が再発・悪化した場合は、使用者に責任が生じることがありますから注意して下さい。

トラブル予防のためにも就業規則に定めておきたい項目
① 休職の理由・種類
② 休職期間…勤続年数に応じて
③ 休職期間の計算
④ 休職者の身分保障・待遇…賃金の有無、この期間を勤続年数に算入するかどうか
⑤ 休職期間中の報告
⑥ 復職
⑦ 受診命令
⑧ 再休職
⑨ 復職の取り消し

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