富士山 新連載 関 浩(宇治久世)  PDF

第1回 富士山の頂上に立ちたい!

 富士は日本で一番高い山、標高3776mは日本で2番目の南アルプス北岳の3193mに比べてもはるかに高い。円錐形にそびえる弧峰は秀麗、壮麗だが近くによって見る山肌は玄武岩を主としており荒々しい。裾野の角度は2、3度と滑らかだが、山頂付近は急峻で32~35度もある。「霊峰富士」と形容するにふさわしい気高い富士の姿を見ると誰もが安心する。 どっしりと日本の真ん中に腰を下ろして、皆を見守ってくれている。 いつ見てもそこにある存在がいかに心強いことか。
 2017年12月16日清滝の愛宕山あたごさんに出かけた。木立の間から弱々しく日光が差し込む。今日は晴れ時々曇りとの気象予報だったが、登山口を少し進むと雪が降りだした。木々に遮られた薄暗がりの中、細かい雪があたかも深海のマリンスノーのように降る。
 愛宕山は標高926m、京都の北西に位置し雷神を祀り、防火の守護神とされてきた。一の鳥居から一丁ごとに地蔵尊が置かれ、50丁で愛宕神社に達する。またこれとは別に100mごとに*/40と標識が設置され、約4㎞先の本殿に達するまでのはげみとなる道しるべがある。水尾別れ、黒門を過ぎたあたりから、3日前に降った雪が踏み固められ、凍った道は滑りやすいが、簡易アイゼンを着けるほどではない。社務所の前の灯籠列を過ぎ、本殿に参拝、通路にある温度計はマイナス4度を指していた。下山コースは、当初月輪寺、空也の滝経由を考えていたが単独でもあり、初めての下山道、おまけに途中の5合目休憩所に昨年6月、今年11月と発生した2人の行方不明者の情報を求むという掲示を見たこともあり、大事を取って、もときた参道を引き返すことにした。
 私が愛宕山に初めて登ったのは17年5月21日だった。
 登山経験が全くなく、体力も普通並みの私だが、「富士山の頂上に立ちたい!!」と思い立ったのが、16年末だった。友人から愛宕山に登れなければとても富士山は無理と言われ、一念発起したのだった。17年2月、自宅よりくつわ池(宇治―宇治田原間の自然公園)往復14㎞を歩き、以後自宅中心に東西南北計280㎞を歩いた後、山歩きに挑戦した。初回の愛宕山に同行してくれたのは右京の張国雄先生、軽やかに歩を進めるが、私はついていくのがやっとの状態、息が切れ、鼓動が激しくなる。立ち止まることが多くなり、先行し待ってくれる張先生には申し訳なかった。汗だくになりながら神社本殿に到着したことを思い出す。それ以後、比叡山標高839m1回、銀閣寺横より大文字山標高465mに登り、ルートがそれぞれ異なる下山道を9回経験した後、8月16日、2泊かけ富士登山を行った。この顛末をお伝えしたい。

文部省唱歌 富士山
巌谷小波 作詞
文部省唱歌 作曲

1.
あたまを雲の上に出し
四方の山を見おろして
かみなりさまを下にきく
ふじは日本一の山

2.
青ぞら高くそびえたち
からだに雪のきものきて
かすみのすそをとおくひく
ふじは日本一の山

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