知っておきたい 医院のための 雇用管理6  PDF

社会保険労務士 桂 好志郎

勤務成績や勤務態度不良と普通解雇

 今年に入ってから採用した受付の職員ですが、勤務成績や勤務態度に問題があり、他の職員から、その職員とはペアを組みたくないとの声まで出ています。解雇できるのでしょうか。

 ◇解雇権濫用の法理の確立と法制化
 労働契約法は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(第16条)と定めています。これは「解雇権濫用の法理」と呼ばれる考え方で、判例において確立されていたものです。解雇が、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を欠く場合には解雇権の濫用として無効とするものです。
 ◇勤務成績、勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合
 実務上、以下のようなものが争われることが多い。
 ①当該企業の種類、規模、職務内容
 ②労働者の採用理由(職務に要求される能力、勤務態度がどの程度か)
 ③勤務成績、勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ、解雇しなければならないほどに高いかどうか)
 ④その回数(1回の過誤か、繰り返すものか)
 ⑤改善の余地があるか
 ⑥会社の指導があったか(注意・警告をしたり、反省の機会を与えたりしたか)
 ⑦他の労働者との取扱いに不均衡はないか
 などを総合検討することになる。(出典「労働事件審理ノート 判例タイムズ社」)
 裁判官たちが執筆したもので、上記の判断基準が、執筆した裁判官たちの普通解雇の基準と言えるでしょう。非常に参考になるものです。
 単に勤務成績や勤務態度が悪いという理由だけでは解雇できないでしょう。反省の機会を与えたり、いろいろ努力したが改善の見込みがない等の事情がなければ解雇権濫用となるでしょう。
 ◇留意する点は
 記録することです。業務上どの程度の支障をきたしたのか、また注意、指導した際の当該職員の態度がどうだったのか。
 そのためには、事実関係を当該職員の認識と一致させておくことが大切です。ここでの認識の違いで、問題の解決方法が違ってきます。

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