シリーズ 環境問題を知る 136  PDF

電気の値段

 資源エネルギー庁は発電コスト検証ワーキンググループ(WG)報告に基づき、「原発は、火力や再生可能エネルギー発電より高くなることはなく、発電コストの面で原発に優位性があることに変わりない」という。
 検証WG報告では、モデルプラント方式(発電プラントを新設した場合の総費用を、そのプラントが発電する総電力で割る)で試算されていて、それでは原発10・1円/kWh(以下同じ)、石炭火力12・3、LNG火力13・7、水力11・0ほか11種類の発電方式のいずれよりも原発が安価であることが示される。
 さらにこの報告では感度分析(ある予測を行う場合、その予測を構成する各項目が変動した場合の全体へ及ぼす影響)も併記されている。例えば資源価格の変動が10%の場合、石炭火力では±0・4円/kWh、LNG火力では±0・9円発電コストが変動し、また追加安全対策費が2倍になると0・6円、事故廃炉・賠償費用が1兆円増で0・04円上昇するという。この感度分析を現状に適応して発電コストを再検討すると、例えば石炭は試算時から24・6%、LNGは51・7%安価になったので発電コストも石炭火力11・35円(マイナス0・99円)、LNG火力発電8・58円(マイナス5・14円)になり、後者はこの段階で原発より安価。
 さらに原発の追加安全対策費は、当初見積もりでは1000億円/基(新設60%、600億円/基)から、新規制基準の下では1269億円/基(新設60%、762億円/基)と27%増になり、それに伴い発電コストは0・16円増加する。次に事故廃炉・賠償費用の当初見積もりは12・2兆円(人口・出力などの補正値で9・1兆円)、経産省の福島原発事故の損害費用見積もりは21・5兆円(同補正値で16兆円)で、補正値差額は6・9兆円になり、発電コストは0・28円増加となる。この両者による発電コスト増は0・44円になり、原発発電コストは10・1+0・44=10・54円と試算されている。
 しかし後者の損害費用見積もりは過小評価の恐れが大きい。例えば、日本経済研究センターの試算では、事故廃炉・賠償費用は汚染水を海に放出した場合で49・3兆円、汚染水を処理した場合は70兆円になり、発電コストは1・1円、1・72円増で原発発電コストはそれぞれ10・1+0・16+1・1=11・36円、10・1+0・16+1・72=11・98円になり、原発の優位性は失われる。
 さらに詳しい分析を行い原発発電コストが12・26~15・14円になるとの報告も見られる。
 そして原発事故による被害は、その多くが金銭で換算できるものではないことはいうまでもない(原子力資料情報室通信を引用させていただきました。文責筆者)。
(理事・飯田 哲夫)

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