医療者は人権と生命を蔑ろにしない政治の実現を求める  PDF

 安倍首相は9月28日、臨時国会冒頭に衆院を解散した。
 保健・医療・福祉制度は国家政策であり、それを決定するのは時の政治である。
 どのような勢力・人物に政治を委ねるのか、それは私たち国民のみが決定できる。
 私たちは国会政策の下で、人々の生命と健康を預かる医師として、あらためて人権と生命を蔑ろにしない政治の実現を求める。

誰もが社会保障で幸せになれる国を
 いつでも・どこでも・誰でもが必要な医療を必要なだけ受けられる国民皆保険制度が軋み始めている。
 私たちの実施したアンケートでは、約半数の医師が窓口一部負担金を理由とした治療中断や必要な治療を断られた経験がある。経済的事由により医療にかかれず、手遅れで死亡するケースも、全国で確認されている。
 基本的人権は憲法に明記された最高位の権利であり、社会保障は人権保障の仕組みであり、それは国家の責務である。にもかかわらず生命と健康が蔑ろにされているのが現実である。いかに給付を抑制するかに心血を注ぐ現在の政策を根本から転換し、必要な財源を確保し、すべての人が阻害なく社会保障にアクセスできる仕組みの実現を目指すべきである。

住民・当事者の意見が活かされる地方行政の実現を
 京都府においても、地域の医療・介護資源の不足が重大な事態になっている。全国一の医師数にもかかわらず、北部・南部地域の医師・診療科の不足や偏在は深刻である。必要な供給の確保に地方自治体や地域の医療・福祉関係者は血眼になっているが、この間、国が講じてきたことは一律の病床機能分化・効率化であり、自治体に対する給付抑制策の押し付けや医師に対する管理・統制策のみである。
 さらに地方創生戦略や国家戦略特区、公共施設管理計画を通じて公共業務の市場開放が促進され、地方行政から主体的・積極的に住民の生命と健康を守る姿勢を摘み取り、そればかりか、地方自治体を経済成長の道具へと変質させようとしている。
 このような国による地方行政支配の政策を転換し、住民・当事者の意見を活かし、困難を打開するような地方行政を育むことを目指すべきである。

平和憲法の理念を活かし、世界から戦争による殺戮の撲滅を
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)とアメリカ合衆国の両政権が罵倒合戦を繰り広げ、軍事的な緊張が高まっている。日本政府は「対話のための対話は意味がない」と、国内では軍拡を外交では経済的圧力とアメリカの核の傘に固執し、あろうことかこの危機を、政権の延命に繋げようとしているのではないか。
 私たちの先達は戦争に動員され、協力した過去を持つ。その反省から、日本の医療者はすべての人々の生命を差別なく守ることを自らに課して存在している。生命を守る見地から医療者はいかなる理由があろうとも、自国・他国の人々を殺戮する戦争を許さない。
 私たちは、日本政府が日本国憲法の理念に即し、国連憲章やこの間の安保理決議にそった解決に向けたイニシアチブを発揮することを求める。
 また、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約への参加と原発に頼らないエネルギー政策の実現を求める。
以上

具体的要望事項
1.社会保障制度改革推進法を廃止し、「社会保障基本法」を制定すること。
 2012年に成立した「社会保障制度改革推進法」は、「自助・共助・公助」で社会保障制度を語るものであり、今日、進められるあらゆる制度改革の基礎となっている。しかし、私たちは同法が国・自治体の医療・社会保障に対する保障責務を曖昧化するものと考えており、同法の廃止、および新たな「社会保障基本法」の制定を求めるものである。
2.都道府県を主体とした医療費抑制策を中止すること。
 (1) 2018年度より実施となる「第3期都道府県医療費適正化計画」に、いかなる形でも「医療費目標」を設定させないこと。
 (2) 「医療費目標」達成を理由にして、高齢者の医療の確保に関する法律第14条(診療報酬の特例)を具体化させないこと。
 (3) 入院医療費目標に、地域医療構想に基づく病床再編等を進めることでの財政効果を見込まないこと。
 (4) 外来医療費目標に、後発医薬品の使用割合や特定健診・特定保健指導の実施率を機械的にリンクさせないこと。
 (5) 第7次都道府県医療計画策定にあたり、「医療従事者の需給に関する検討会」が用いた必要医師数の推計方法による「医師数目標」を書き込ませないこと。
 (6) 地域医療構想の医療需要・必要病床数推計については、各都道府県が圏内各地域の医療事情、地域住民の生活・経済状況を細やかに把握する社会学調査を行い、その結果を踏まえる等、真のニーズに基づいて行わせること。
 (7) 病床の機能分化がトップダウン方式とならないよう、知事の要請に従わない場合の懲罰的措置規定は廃止すること。
3.市町村国保の都道府県化にあたり、国の医療保障責務を明確化すること。
 (1) 市町村国保の都道府県化にあたっては、定額3400億円の追加公費に止まらず、医療費全体に対する国庫負担割合を抜本的に引き上げること。
 (2) 3400億円のうち、2018年から実施する1700億円分の使途として計画されている「保険者努力支援制度」を導入しないこと。
 (3) お金のあるなしで、医療へのアクセスが制限されないよう、資格証明書交付制度は廃止すること。また、各保険者による生活を脅かす形での「滞納処分」=財産差し押さえは行わせないこと。
 (4) 国民健康保険法第44条に基づく一部負担金減免制度について、必要とするすべての人が利用できるよう、市町村に徹底すること。
 (5) 保険財政リスクを分散し、安定的な保険制度運営を図ると同時に、すべての人々が必要な医療を必要なだけ受けられるよう、全国一本の医療保障制度を確立すること。
4.「医師に対する新たな規制」を行わないこと。
 (1) 医師偏在解消を建前に進める「医師に対する新たな規制」(保険医定数制・定年制・自由開業制規制等)の導入に反対すること。
 (2) かかりつけ医以外を受診した際の「定額負担」導入に反対すること。
 (3) 紹介状なしで大病院を受診した際の「定額負担」の廃止を求めること。
 (4) 新専門医制度創設により、地域の医療崩壊が加速しないようにするとともに、同制度を医師規制策に利用しないこと。
5.国として、すべての子どもを対象とした医療費無料制度を創設すること。
6.高齢者・障害者・児童・ひとり親家庭等、福祉医療に関する地方単独事業を実施する市町村に対する、国保への療養費等国庫負担金減額調整について、全廃すること。
7.要介護認定で「軽度」と判定された人に対する、保険給付外しなどの差別的取り扱いを中止すること。
8.後期高齢者医療制度や介護保険制度における一部負担金の2割化や、入院患者に対する居住費自己負担の拡大等、国民に対する負担増策を中止すること。
9.マイナンバーと医療IDを結び付け、機微な個人情報を危険にさらし、個々人の給付と負担を管理し、給付抑制に役立てる「社会保障個人会計制度」を目指さないこと。

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