九条医療人の会が総会 白井聡氏が戦後の日米関係を分析  PDF

 九条の会アピールを支持する京都医療人の会は5月20日、第9回総会と講演会を開催。公開講演会には市民も含め55人が参加し、講演後に参加者アピールとして、「9条改憲を許さず、憲法の平和主義を守り続ける宣言」を採択した。
 講演会は、白井聡氏(政治学者、京都精華大学専任講師)を講師に「トランプ政権と日本外交―『永続敗戦論』から日米関係を考える」をきいた。
 白井氏は、日本が米国の属国以外の何ものでもないということを理解しようとしないのは、「敗戦の否認」=負けたことをごまかし続けることで戦後の社会が成り立ったために、それを直視できないことに由来しており、森友・加計問題に見られるような今日の不健全な政治、社会が作り出されたと指摘。市民がいかに政治的な見識を高めることができるかが重要だとした。

「敗戦の否認」が核心

 「敗戦の否認」こそが戦後の核心だと指摘した『永続敗戦論』は、石橋湛山賞などを受賞した氏の代表作。普天間基地移設問題を巡って日米の意思が衝突した結果、日本側が敗北したが、その敗北を直視する代わりに鳩山氏個人の資質が批判に晒されたこと、福島第一原発事故で敗戦時と変わらぬ「無責任の体系」が露呈したこと、この二つの出来事が執筆契機となったと語った。
 日本が戦争に負けていないのだとすれば、大義も、勝利の可能性もなかった戦争を始めたことの責任を、誰もとる必要はないし、反省する必要もない。負けたことを認めないので、そのシステムは温存されて延々と負け続ける。すなわち、「永続敗戦」こそが戦後を特徴づけているとした。
 米国は旧支配層を傀儡として活用し属国化をはかっていくために、責任をできる限り曖昧にしなければならなかった。これにより日本は戦後の平和と繁栄を謳歌できたが、その代償として不健全で無制限な対米従属となる。一方で、アジア諸国への高姿勢と歴史修正主義への軋轢があり、この対米従属と東アジアでの孤立は循環構造であると分析。
 米国の力を借りて復興を果たすことには、それなりの必然性はあったが、レジーム成立の二大要件(東西対立、アジアでの日本の国力の突出)が消滅したにもかかわらず、対米従属の正当化が図られてきた。政官財学メディアの利権共同体は、この妄想を維持し続ける必要がある。戦後の対米従属体制を打ち固めた岸信介の孫を強く自覚する安倍氏こそは「永続敗戦レジーム」の申し子であり、これを徹底しようとしている。そのために憲法を実質的に変える集団的自衛権行使を閣議決定でやり、集大成としての改憲に踏み込もうとしている。

安倍改憲の阻止を

 安倍首相をはじめとする今の改憲勢力は、立憲主義に照らして憲法を語る資格のない人たちであり、この勢力による改憲は絶対に止めないといけない。それを排除してはじめて本当の議論が始められる。その中で私たちに何ができるかを考えていきたい、と結んだ。

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