マダガスカル 7  PDF

関 浩(宇治久世)

マダガスカル固有の動物 ペリネ特別保護区 インドリ

地球上に現存するキツネザル(Lemurs)の大部分がこのマダガスカルで繁栄しているといわれ、その数は30種類以上にも及ぶ。ブラウンキツネザル、シロクロエリマキキツネザル、地上で横っ飛びに移動するベローシファカ、キツネザル最大のインドリ、なかでも体長より長い尾が白と黒の輪をつなげたような模様を持つワオ(輪尾)キツネザル(Ring-Tailed Lemur)などが人気者であり国内の保護区で見ることができる。
ロッジを出て最初に訪れたのが、「ヴァコナ自然保護区」内のレミュールアイランド、幅2m程度の水路であっても水が苦手なキツネザルは脱出することができない。ボートから降りるとさっそくシロクロエリマキキツネザルが出迎えてくれて肩、頭に飛び乗ってくる。重さは3、4㎏程度、毛はふさふさで、臭いはない。カメラやサングラスをむしり取ることもない。小さいバンブーキツネザルもはにかみながら迎えてくれる。向こうでは観光客が3頭のブラウンキツネザルに肩、腕、頭にしがみつかれて楽しそうに悲鳴を上げている。誰もが楽しめることうけあいだ。
途中アンダシベの廃屋となった駅舎に立ち寄る。さびれたロータリー芝生には1947年建設との記銘碑が立つ。アンタナナリヴへの帰途、昼食に立ち寄ったムラマンガにももう使われなくなった線路、駅舎があった。かつて鉱山から島の東海岸にある鉱物積み出し港タマタブ港へ通じた植民地時代の旧線である。
マンタディア・アンダシベ国立公園内のインドリ・アナラマザウチャ特別保護区に入る。ここは仏植民地時代にペリネ特別保護区と呼ばれたが、いまでもこの呼称が一般的になっている。
1768年、ヨーロッパ人がマダガスカルを調査・探検の時、現地の人がインドリを見て「エンドリナ(ほら見て)!」と叫んだことから、間違って名づけられたという。インドリは原猿類最大で、体長70㎝、10㎏にもなり、特徴は体長と同じ長さの強靭な後脚を持ち、木の幹を助走なしで10mもジャンプし移動できる。16年9月25日のNHK番組「ダーウィンが来た!」で紹介されたのでご覧になった方も多いのではないだろうか。
保護区内は常にガイドと一緒に行動するのがきまり。インドリが生息するコースといえども、自分で見つけるのは至難の技である。運が悪かったり、天候次第で出会えないこともある。ガイドの「ほらあそこ」と指さす高い枝に目を凝らしてもなかなか見つけられない。しっかりした幹に、白と黒の模様で尾の短いインドリが食事中で、葉を採るため腕を伸ばすと背中にしっかりとしがみついている小さな子猿も見える。コースといっても草木をかき分けて進まなければならず、朝早いとぬかるみで滑ってしまう。移動中、インドリの甲高い鳴き声が聞こえてきた。歌を歌うようなきれいな鳴き声と評されるが、近くで聞くととてもうるさい。縄張りを主張し2㎞先まで伝わるというだけある。
アンタナナリヴへの途中、カメレオンファームに立ち寄る、この村にはイリソアの実家があるので、彼は許可を求めて路地に走り込み、叔父に挨拶をしてきたとすぐに戻ってきた。彼は近々結婚を控えている。尋ねると相手は25歳とはにかむ。結婚式披露宴の料理に男性側は30万アリアリもの牛1頭を提供しなければならないきまりだという。
アンタナナリヴでのホテルは高級なル・ルーブル、独立広場に面し市内で最大の繁華街のアナラケリー・マーケットに近いが、夕方以降は危険なので外出は控えるように言われ、やむなく広場散策だけに。それでもホテルから一歩でも踏み出すと、さっそく物売りにつきまとわれ、早めに切り上げることにした。

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