マダガスカル6 関 浩 (宇治久世)  PDF

アンダシベ ワコナ・ロッジ

首都アンタナナリヴ到着後、運転手が変わり、リチャード氏、50歳、挨拶も交わさず無口で陰気な印象だった。
これから「ペリネ特別保護区」のあるアンダシベまで国道2号線を東に140㎞、約4時間の行程、くねくね道が多いと聞いた。最初の予定よりすでに4時間半遅れており、市内の渋滞を抜けるまで1時間はかかり、排気ガスが容赦なく車内に入ってくる。窓を閉め冷房というがまともに冷房など効かぬ。いきおい窓を開けざるを得ない。
やっと抜けると、すでに真っ暗、おまけに夕食に立ち寄る予定の途中のレストランは10時も過ぎれば当然閉まっている。あと1時間強で着くはずと聞き、ロッジに着きさえすれば何とかなるはずだと自分にいいきかせる。国道より保護区内に入る。保護区入口に開閉バーがあり、クラクションを鳴らすと傍の掘っ立て小屋から番人がのそのそと這い出しバーを上げてくれた。一般道から入ると凹凸の山道だ。エンジンをふかすタイミングでしょっちゅうエンストを起こす。そのたびイグニッションを回す。オートマチック車でなくおまけに凸凹が激しいのでと言い訳をするが、そんなんじゃないだろう?
周囲は車のライト以外、鼻をつままれてもわからないぐらいの原生林の漆黒の闇、ひょっとしてそのうちエンジンがかからなくなる? パンクか脱輪でもしようものなら真っ暗なこの5㎞の山道を懐中電灯1ケと光量の少ない携帯電話をたよりに歩いて登ることになるのか? いろいろ分かれ道もあるのに。「邦人らマダガスカル原生林で遭難!!」の新聞記事が浮かぶ。いざ路肩飛び出しに備えてシートベルトを締めなおした。
それでもなんとか23時25分ロッジに到着、ホールに電気は点いているが人影がない。インターホンを押すも、通用口を叩くもなんの反応もない。
イリソアが宿舎に走っていき、やっと従業員が現れバンガローに案内された。しかし軽食が、温かい飲料が出るわけではない。
T-falではないが電気ポットがある、やれやれとスイッチをいれるも点灯しない。音もしない。故障か? 標高は高く部屋は暖房も効かず、寒く空腹だ。カップヌードルを持ってきたが、水漬けのカップ麺など食べられるものか。
備え付けのビスケットで我慢するしかないと諦めかけていたところ、点灯しなかったがそのままにしていた電気ポットMoulinexからシュシュとかすかに音が!お湯が!!熱いカップ麺が旨い!!!カップヌードル発明者はほんとに天才だ!!!

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