第192回 定時代議員会 決議  PDF

私たち保険医は、世界に冠たる国民皆保険制度を、尽力してきた先達から受け継ぎ、「保険で良い医療」「保険で良い医業」を堅持し充実させてきた。同時に、その礎となる、国民の安寧、安全、生活の質の向上を願い、活動をともに続けてきた。
しかし、大きく阻む政策が次々と打ち出され、危機的状況は加速する。2016年骨太方針の社会保障費抑制策の患者負担増計画通り17年度予算案が示された一方、防衛費は年々膨張している。
高齢者の高額療養費負担の引き上げ、窓口負担の引き上げ、病床での居住費の患者負担化など医療費削減策は容赦なく病者を打つ。社会保障制度改革推進法に則り、病床機能分化・病床数削減により在宅移行を促進し、地域包括ケアシステムの構築を推進してきたが、地域の医療・介護の現状は極めて厳しい。京都府が示す地域包括ケア構想の中間案は、その現状を鑑みたものであり、行政との更なる協働が望まれる。
18年から市町村国民健康保険は都道府県化され、医療費適正化計画が医療費支出目標を明記し開始される。この支出を抑制し、医療費格差を是正する施策は、医療の個別性や地域を軽んじる。更に、審査・支払機関の見直しや基準の統一も進み、保険医の裁量は制限される。
新専門医制度は医療の質の担保を掲げたが、内実は不備そのもので、協会も含めた各方面からの逆風で、実施は18年に延期された。この制度は医師偏在解消策として、専門科及び地域の医師数統制が目論まれる。「地域医療構想」と合わせて、自由開業制見直し、保険医定数制導入へと向かうと、患者さんのフリーアクセスも制限され、保険医療を危うくする。保険医自ら積極的に専門医制度、偏在解消策を検討し、機を逸せず提言したい。
医療は経済、市場原理にはなじまず、TPP及び関連法により、国民皆保険制度が標的となり、崩壊を招くリスクがある。また、高額薬剤は不透明な薬価算定システムも露呈し、17年2月緊急薬価改定が行われる。適正な方策に注視し、提言を進める。経済優先、効率化は地方自治にも及び、京都市では保健・医療・福祉政策の後退が危惧されるため、保険医として提言を行う。
安全保障関連法も議論が尽くされず数の力で発効し、かけつけ警護が強行された。人命が軽視され、戦争に加担し、平和憲法の下、70年以上守られてきた平和が脅かされる危険を孕む。
福島原発事故の検証、健康被害や生活の補償は不十分なまま、避難児童・生徒のいじめも次々と発覚した。熊本、鳥取、福島にみられた、地震列島にある原発の拙速な再稼働を阻みたい。
2018年は医療・介護報酬同時改定の年であり、医療大転換の年である。それに向けて私たち保険医は、現場から積極的に智慧と力を結集し、国民の医療と生活を守っていきたい。
◇   ◇
一、憲法を遵守し、医療・介護・福祉制度を拡充する社会保障基本法を制定すること。
一、国民皆保険を堅持・拡充・発展させること。
一、受診抑制を加速する患者負担増を見直すこと。
一、新専門医制度は国民医療の質の向上と地域医療活性化に資するものとすること。
一、医師の診療科・地域偏在の解消は規制的手法によらず現場の声を反映させること。
一、高額薬剤の問題を解決し、透明性のある薬価算定のシステムを再構築すること。
一、医療の公共性と安全性を崩壊させる恐れが明らかなTPPから撤退すること。
一、原発再稼働・原発輸出等を直ちに止め、再生可能エネルギーへ転換すること。
一、人命を危険にさらし平和を脅かす「安全保障関連法」は廃止すること。
◇   ◇
2017年1月26日
京都府保険医協会
第192回定時代議員会

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