私の閉院後生活3  PDF

野々下靖子

カフェオープン!

2015年9月2日、けやきの家(認知症カフェ)はオープンしました。
前もって登録して下さったのが限られた人だけで、当日まで不安でしたが、開けてびっくり。狭い部屋に入りきれず、来て下さった皆さんに窮屈な思いをさせてしまいました。集まった顔を見ると当事者もボランティアも、ほとんどが旧野々下医院の患者さん達で、皆さんにとっては通いなれた診察室でした。
「認知症カフェ」とは、認知症の人やその家族・認知症予備軍といわれる人や、地域住民のボランティアが気楽に集まり、お茶を飲みながら談笑しあう場という形が基本と考えます。けやきの家の場合は専門職もいますから、医療やケアの相談も受けます。
野々下医院では平成に入ったころから認知症の方の受診が増加し、最近では軽度認知障害や認知症初期の方が相談に来られるという体験をしていました。早期診断をし、本人・家族へ告知を行い、続いて起こるであろう生活障害とその対策の説明をしても、現実には彼らに受けていただくサービスがありません。単純な私は「そんなら私がその一部を担うカフェを開こう」「医療と福祉の橋渡しをしてきた者にピッタシや」となったわけです。
そこで自分なりに認知症の問題と地域の課題に対応するため目標を立てました。
①軽度認知障害・認知症初期の人に対するサービスを考える②認知症の人の本来有している能力を出していただき、社会での役割を担っていただく③近隣の住民との対話の機会を作る④認知症に対する偏見を是正し、正しい理解が深まるための努力をする⑤介護家族は生活面での知恵の交換を行い、ほっと心安らぐ時間を共有していただく―。
開催は月に2回。第1第3水曜日の午後1時半から3時半まで。申し合わせたことは 「お互い、話はよく聴きあおう」「持っている力はだす(人使い荒いなあの感想あり)」「参加者は全員お茶とお菓子代1人1回200円」「やりたいことは提言する」などでした。実は提言が多くプログラムに挙げられないのが実情です。
15年9月から16年10月までの参加者人数(表1)と、自宅からカフェまでの距離(表2)で分類してみました。表を見ていただければ、当事者もボランティアもほとんどご近所さんです。今後の認知症対策としてこのような小さなカフェが歩いて行ける範囲に多く設置され楽しく活動できる社会になればと願っています。(おわり)

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