シリーズ環境問題を考える 132  PDF

無責任の託送

2015年に公表されたIAEA福島原発事故最終報告書は、福島原発ではIAEA基準で深刻度が高い4・5段階の事故対策がほとんど何もなく、事故は起こるべくして起こったと断定した(IAEA=Interna-tional Atomic Energy Agency 国際原子力機関~原発など原子力の平和的(と呼ばれる)利用の促進と、軍事的利用への転用防止を目的とする国際機関)。
2020年以降は電力改革に伴い、(沖縄を除き原発を持つ)大手電力は発電と送電が分離し、発電(小売り)部門は送電部門に送電託送料を払う(最終的には消費者が負担)。電力自由化に伴って参入した(原発を持たない)新電力も大手の送電に託送料を支払う。
2016年になり福島原発事故処理費用が、当初見積もりの11兆円から21・5兆円以上に上ることが明らかになった。その内訳は賠償費5・4兆から7・9兆、除染・中間貯蔵費3・6兆から5・6兆、廃炉費2兆から8兆円。東京電力の経営破綻救済、さらに事故炉以外の原発の廃炉費用をどのように回収していくのかという問題に対し、政府の「中間とりまとめ」では、これらを託送料金を通じて回収する方向がしめされた。詳しくは、廃炉費は原則として東電が負担(当初案ではこれも託送料に上乗せすることになっていたが、反対が強く撤回したといわれている)、除染・中間貯蔵費は東電株の売却益や税金を充当、そして賠償費の増加分は(原発を持たない)新電力も加え、託送料に新たに上乗せして(=電気料金に転嫁して)40年かけて消費者から回収するとしている。
この方式が採用されれば、新電力利用者をもふくめてすべての消費者が責任と負担を強いられることになる。このような無責任な内容をもつ「中間とりまとめ」は認められず、原発関連コストは(原発)発電事業者が負担し、電力改革を悪用した託送料金上乗せを行わせるわけにはいかない。
(政策部会・飯田哲夫)

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