医師が選んだ医事紛争事例 52  PDF

ハローベストで脱毛に 患者にとっては深刻です

(50歳代後半女性)
〈事故の概要と経過〉
頸椎前方固定術、左腓骨移植の手術目的で入院して手術が施行された。術後、回復室の担当看護師がハローベスト装着中の患者の様子を見ていた。患者はICUベッドに移動したが、他の看護師が患者の使用していた枕が病棟の備品であるにもかかわらず、手術室の備品であると思い違いをして同枕の返却を求め、患者は枕代わりに布製の小敷を使用することになった。患者は当時から「頭が痛い」と訴えていたが、看護師は自制内であると判断して放置していた。その後、頭痛の原因はハローベストの金具が当たっていると判断して鎮静剤投与で様子を見た。その後、全身清拭のため、側臥位の姿勢をとった際、後頭部に3㎝×5㎝の発赤・腫脹を発見した。その部位は3㎝×7㎝の大きさで脱毛に至ると共に、触れると痛みが残った。
患者側は、具体的な額は明示せずに、後頭部の脱毛に関して賠償請求をしてきたが、特にカツラ代について賠償金額で折り合いがつかず訴訟を申し立てるに至った。
医療機関側としては、脱毛の原因は、ハローベストで動かないように固定していた後頭部に対して、枕として使用していた小敷が強く患者の後頭部部分に接していたことから細胞が死滅したと考えた。ハローベストで固定した患者に対しては、専用の枕を使用することは当然で、小敷を使用すれば2時間程度で後頭部に褥創等、障害が発生することは予見可能であったにもかかわらず、看護師の勘違いから小敷を枕代わりとし、なおかつそのことに他の看護師も気付かなかったことは明らかな医療過誤と判断した。
紛争発生から解決まで約2年11カ月間要した。

〈問題点〉
医療機関側の主張通り、脱毛までは予見できなかったとしても、後頭部に何らかの障害が発生することは十分予見可能であったと考えられた。患者の主な損害は後遺障害として第14級9号(当時)「局部に神経症状を残すもの」と第12級15号「女子の外貌に醜状を残すもの」が相当すると考えられた。
〈結果〉
医療機関側は全面的に過誤を認めて示談を試みたが、患者は医療機関側の提示額に納得しなかったため、訴訟となった。裁判では和解となったが、和解金額は訴額の半額にも満たなかった。

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