肥満症の外科治療の現状を解説 外科診療内容向上会レポート  PDF

11月5日、外科診療内容向上会が京都外科医会、京都府保険医協会、株式会社ヤクルト本社の共催でメルパルク京都において開催された。参加者は27人。

前回の京都外科医会から始まった審査会だよりとして、今回は、京都府国民健康保険診療報酬審査委員会の専任審査委員である斎藤信雄氏がレセプト審査の概要を解説された。審査は、医師のプロフェッショナル・オートノミーによるピア・レビューであり、医療の質の向上、標準的医療の実現、医療費の適正化の実現を目的とするものであることを、まず力説された。また、医学的根拠に基づいて、公正、公平に審査されることが原則であり、保険適応として承認された医療行為のみが診療報酬として認められ、これからはずれた場合には、医学的に正しくとも認められない行為があることを強調された。
つづいて、特別講演では「肥満症・2型糖尿病患者に対する外科治療の実際」として、医療法人医仁会武田総合病院外科部長代理の岩田辰吾氏が、いわゆる肥満手術について講演された。その要旨である。
いわゆる肥満手術は欧米では1950年代から始まっているが、米国の内科学会で05年に肥満症に対するガイドラインができ、高度肥満症患者に外科手術が推奨されるに至り、以後急速に外科手術が行われている。肥満症に対する外科手術は①胃を縮小させて食餌摂取量を減少させる方法と、②バイパスを作成して消化吸収を抑制する方法と、およびそれらの組み合わせがある。わが国では80年代に開腹して行う①法が保険収載されたが、10年に腹腔鏡下に行うスリーブ手術(穹窿部を含む大弯側の胃を切除し残胃をバナナ状にする①法の一種)が先進医療として認められ、さらに14年からは施設基準を満たした施設(京都では武田総合病院のみ)でのみ保険適応となった。その適応は、BMI(Body Mass Index)が35以上で、6カ月以上の内科治療に抵抗し、糖尿病、高血圧症、脂質異常症のうち一つ以上を合併する症例とされている。いわゆる肥満手術は、合併する種々の健康障害にも有効とされMetabolic Surgeryとも呼ばれる。特に2型糖尿病に対しては、その効果が内科的治療より有意に優れており、その効果が5年以上持続することが確認されている。15年のDiabetes Surgery Summitの共同声明で2型糖尿病に対するMetabolic Surgeryの優位性が示された。その中で、アジア系人種ではBMIが27・5以上の肥満患者で、薬物療法でコントロール不良な2型糖尿病患者に対するMetabolic Surgeryの適応が示されているという。この共同声明に賛同した医師のうち75%が非外科医であったそうである。
ちょうどこの講演と時を同じくして開催されていたJDDW2016でもパネルディスカッション:肥満治療の諸問題として議論されたが、こちらでは、手術後も内科医により肥満の管理を続けるべきであると外科医からの提言があった。
(上京東部・谷口弘毅)

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