主張/より具体的で実践的な医療事故報告の判断基準を  PDF

 医療事故調査制度が始まって1年が過ぎた。9月末までの医療事故報告件数は、病院が362件、診療所が26件の388件、院内調査結果報告件数161件、相談件数が1820件、相談の内容は、医療事故報告の判断753件、手続き514件となった。報告件数に関しては、厚生労働省では制度開始前に1300から2000件と見積もっていたことから、想定を大きく下回るものとなった。
 この制度で対象となる医療事故は「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」および「管理者が予期しなかったもの」の二つの状況を満たす死亡または死産と定義されている。相談件数から、医療事故の報告の判断に関する相談が多く、我々が予想したように「予期せぬ死亡」を前にして、医療現場が報告の段階で戸惑っていることがうかがわれる。
 また事故報告の質にもばらつきがあり、事故報告書を受け取った遺族からかえって不信感を持たれるケースもあるという。
 これらの事態を受けて厚生労働省は6月24日、医療事故調査制度の一部見直しを行っている。医療事故調査等支援団体による協議会が設置され、医療事故の届け出基準の統一化や、調査報告書の標準化を進めようとしている。
 報告書の標準化はともかく、届け出基準の統一化は容易ではないであろう。医療機関が判断に迷って、いたずらに時間が過ぎたり、事故ではないと判断し、報告しなかったりすれば、事故ではと疑う遺族から不信の目が向けられ、かえって医療訴訟が増えれば本末転倒である。
 また、事故の原因究明も時間が経てば、不可能となるケースもある。この1年間、医療事故調査・支援センターに相談のあった中から、医療機関が報告すべき死亡か判断に迷った事例を可能な範囲で例示して、より具体的で、実践的な事故報告の判断基準を示してほしいものだ。

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