医師が選んだ医事紛争事例 200 運動負荷心電図検査後に転倒して左上額切創・頭部打撲  PDF

(50歳代後半男性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は狭心症の治療のため本件医療機関にてエルゴメータによる運動負荷心電図検査を受けた。開始約15分後、患者が下肢疲労を訴えたため終了した。医師は終了3分後に回復期血圧を測定すると、数値が159/106oHgであったため状態は安定していると考えた。しかし、看護師が患者の電極を外した直後に患者が転倒し、左上額を打撲・切創、出血し眼鏡も破損した。すぐに、医師は患者の意識を確認した。その際、血圧は86/66oHgであった。左上額をヒビテンで消毒し、創部をキズパットで保護した。その後、医師は念のため他医療機関に搬送した。他医療機関では局所麻酔の上、縫合したとのこと。
 患者側からは具体的な訴えなどはなかったが、医療機関側の対応を待っている様子がうかがわれた。
 医療機関側としては、運動負荷後の急性血圧低下による失神が原因で発生した事故と判断し、検査後の患者の症状の確認や状態観察が不十分であったとして、過誤を認める見解を示した。また、検査をするに当たり、事前に患者に転倒の可能性などの注意事項を伝えておくべきであったとの反省点も述べた。なお、患者の心拍数が想定通り上がらなかったため、無理をさせたことが転倒につながった可能性が高いとのことだった。
 紛争発生から解決まで約1カ月間要した。
〈問題点〉
 医師はエルゴメータの検査を行うにあたり、患者が失神する可能性については経験則から予測できたと説明している。
 当該事例では負荷終了3分後の血圧に問題はなかったが、負荷が強かったことを加味して、起立性低血圧の発症を防ぐために、まずは看護師が患者を椅子に座らせるなどの対応をしていれば、事故を防げた可能性は高いと推測する。
 また、患者に対して、運動負荷後に血圧低下が生じ、場合によっては失神する危険性を説明し、体調変化に関してはすぐに医療スタッフに告げるなどの説明を行った上で十分な観察を行う必要があると考える。
〈結果〉
 医療機関側が賠償金を支払い示談した。

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