かんぽう趣談 11 田中 寛之(舞鶴)恐竜を薬に?  PDF

昨夏、小生が住む舞鶴市で「恐竜王国inまいづるリターンズ」なるイベントが開催された。恐竜の化石標本が何体も展示され、大人も子どもも楽しめた。
さて、この恐竜の化石が「竜骨」という名で生薬として使われることをご存じであろうか。とはいっても、そんな貴重なものが薬用として流通するはずがない。実際はほとんどが馬や牛、鹿などの大型哺乳類の化石である。
竜骨の主成分は炭酸カルシウムで、鎮静作用を持つ。柴さい胡こ加か竜りゅうこつぼれいとう骨牡蠣湯、桂けい枝し加か竜りゅうこつぼれいとう骨牡蛎湯といった処方に入っており、神経症や不眠に使われる。
確かに「カルシウムが不足するとイライラする」という俗説がある。とはいうものの骨粗鬆症の薬としてカルシウム剤を服用している人が、精神的に安定しているかというとそうでもない。
しかしこの「竜骨」はそれなりの効果がある。なぜかは分からない。骨の化石に含まれるカルシウム以外の成分が効くのか、はたまた竜骨と他の生薬を一緒に加熱することによって他の生薬の抽出される成分が変わってくるのか……。漢方薬の不思議なところである。
と、ここまで竜骨が恐竜もしくは哺乳類の化石であると書いてきたが、賢明な皆さんは疑問に思われるだろう、「哺乳類の化石ってそんなに豊富に採れるの?」と。
そうなのである。今のところ生産量は確保できているが、今後は原料不足に陥る可能性が高いのだ。
実際、中国では哺乳類の骨を数年の間、土に埋めて、竜骨が「製造」されることもあるという。そのほか、骨を煮たり薬品で加工したりする方法もあるとか。もちろんこれは「竜骨」とは認められず、まがい物としてコッソリ市場に出回るらしい。これらの偽竜骨は「イヌ竜骨」と呼ばれることもあるとのこと。犬にとっては全く失礼な話である。
このように竜骨にまつわる話は尽きない。それにしても「恐竜の化石」を薬用にするという発想には頭が下がる。さすが漢方発祥の地である中国は、「龍の国」である。

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