犬笛とはもともと、犬にしか聞こえない周波数の音を出して調教に用いる道具。
そこから転じて、政治家などが、自分の支持者だけに通じる暗号的な表現を用いて、人々の考えや行動を操ることを指すようになった。
最近はさらに転じて、特定の個人や集団を攻撃するようけしかける行為が「犬笛を吹く」と呼ばれている。
NHKから国民を守る党の立花孝志・党首が、兵庫県知事の内部告発文書に絡み、元県議について事実に反する演説を重ねたとして名誉棄損罪で起訴された。元県議は、彼の演説をきっかけにSNSによる非難の殺到や脅迫電話などを受けて自死した。
選挙活動に名を借りてデマをまきちらし、勝手放題をしてきた立花党首のむちゃくちゃな行動を考えれば、刑事事件化は遅いぐらいだ。
日本維新の会の藤田文武・共同代表は、公設秘書が経営する会社に政治資金を支出していた問題で、取材したしんぶん赤旗の記者の名刺をSNSでさらした。記者の氏名、非公開の部署直通電話番号、一部を消した記者の携帯番号・メールアドレスが載せられ、万単位のメールが殺到した。これも明らかに犬笛で、業務妨害の教唆に近い。
さかのぼると、大阪府知事になる前の橋下徹氏が2007年、光市母子殺害事件の被告の弁護団を懲戒請求するようテレビ番組で呼びかけ、大量の懲戒請求が行われたことがあった。橋下氏は大阪弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分を受けた。
2020年には女子プロレスラーの木村花さんが自死した。首謀者の有無は定かでないが、テレビ番組での言動をきっかけにSNSで大量の誹謗中傷を受けていた。
埼玉県では近年、クルド人に対するヘイトデモや嫌がらせ行為が、一部の政治家などのあおりで起きている。
しょっちゅう犬笛を吹きまくっているのはトランプ米大統領。裁判官、政治家、大学、メディアなどを含め、気に入らない人物や組織に対する攻撃を露骨に扇動している。
自分ではやらずに不特定多数による攻撃を誘導する犬笛の吹き手は、ずるい。
それに付和雷同して攻撃する「犬」たちも見過ごせない。主観的には正義感だろうが、ネットの匿名性に隠れ、自分の責任は問われないと思って他者を袋だたきにするのだから、卑劣きわまりない。
侮辱罪の罰則強化は行われたものの、刑事事件は厳密な立証が求められ、捜査する人員の面でも限界がある。
民事の賠償請求は重要な対抗手段だが、損害が生じてからになるうえ、発信者の特定に労力がかかり、勝訴しても日本の判決は賠償額が安い。
不当な集団攻撃の扇動罪の創設、発信者情報の簡易迅速な開示、匿名や仮名による発信の規制など、何らかの立法措置が必要ではなかろうか。
言論の自由とのかねあいや政治弾圧に悪用される懸念から、慎重な意見はあるが、人命が失われるなど被害は大きく、社会の雰囲気も悪化している。集団攻撃は、異論の封圧にも用いられつつある。
犬笛を吹く奴らを叩きのめせ、とけしかけてみようか。
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