協会は10月11日、京都外科医会と共催で、外科診療内容向上会を協会会議室(ウェブ併用)で開催した。京都外科医会副会長の正木淳氏が進行し、30人が参加した。協会の曽我部俊介理事と松村博臣理事から情報提供の後、外科医会例会の症例検討会が行われた。続く向上会では、医療法人社団志高会三菱京都病院院長の尾池文隆氏を座長に「上部消化管手術のトピックス」と題して京都大学大学院医学研究科消化管外科講師の久森重夫氏、「Industry4.0時代における大腸がん手術の現状と展望」と題して京都府立医科大学外科学教室消化器外科講師の有田智洋氏の特別講演が行われた。
レポート
趙 秀之(西京)
ちょう桂坂中央クリニック
外科診療内容向上会は、まず、「進行胃がんに対するロボット支援手術の役割」の演題で、京都大学消化管外科講師の久森重夫先生が講演されました。進行胃がんに対する拡大手術に関する4件の臨床試験の結果を紹介され、全てその有効性が否定されたことにより、進行胃がんに対する手術は拡大手術路線から低侵襲手術すなわち腹腔鏡手術やロボット手術へと舵が切られたと説明されました。その中で、1991年日本で世界初の腹腔鏡補助下幽門側胃切除が報告されて以来、国内で急速に腹腔鏡下胃切除術が普及し、2002年には国内でRobot支援幽門側胃切除術が報告されました。2014年には宇山一朗先生による日本国内他施設共同研究が行われ、cStageI/Ⅱ胃がんの術後合併症と3年生存率において腹腔鏡下手術に対するロボット手術の優位が報告され、急速にロボット手術症例が増加していると報告されました。
京都大学消化管外科では「新しい技術をどんどん取り入れ、患者に還元する」という基本理念に基づき、早期より腹腔鏡下手術、ロボット支援手術を開始し、2025年の統計では、約3分の2の症例でロボット手術が行われている現状を説明されました。手術成績でも治療成績に有意差はないものの、腹腔鏡手術と比較し術後合併症の割合は低いと報告されました。今後の展望として「少しでも手術治療成績を改善させるため、ロボットを含めた医療工学の発展による恩恵をいかに臨床の場に応用できるかを模索し続けることが望まれる」と結論されました。
次いで「Industry4.0時代における大腸がん手術の現状と展望」の演題で、京都府立医科大学外科学教室消化器外科講師の有田智洋先生が講演されました。ロボット手術の特徴は、①多関節機能で狭骨盤での繊細な作業が可能である②3D視野による没入感が得られる③全ての鉗子の操作が一人でできる④手ぶれ補正機能による操作と視野の安定―が挙げられると説明されました。次いで、大腸がん手術の歴史の説明がありました。1738年の世界初の直腸がん手術報告に始まり、1908年にはMilesらにより周囲リンパ節切除の有用性が指摘され、1982年にはRichard John HealdによりTMEの有用性が報告され、現在の手術手技の根拠となっていると説明されました。さらに直腸がんの手術は根治性と機能温存の両立が必要とされ、狭骨盤の中で、手術を困難なものにしていました。その中で、1993年日本初腹腔鏡下大腸切除が報告、2010年には日本初ロボット支援大腸手術が報告され、2019年にはロボット支援直腸がん手術が保険収載されました。しかしロボット手術といえども、あくまでもツールに過ぎず、大腸がんに対する外科手術の本質は何も変わっていないと強調されていました。最後にお二人に、京都外科医会の藤信明会長より感謝状が授与され、会が終了しました。







