薬剤アレルギー情報の登録を失念し、薬疹発症
(50歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
患者は乳頭からの分泌物があったため本件医療機関の乳腺外科を受診した。その際、問診票に「ピロリ菌除去の際に服用した抗生物質で蕁麻疹を発症した」と記載した。しかし、看護師は問診票の内容を確認したものの、電子カルテの禁忌事項欄にアレルギー情報の登録を失念し、具体的な薬剤名も患者に確認しなかった。
初診から約4カ月後の診察時にも、患者は以前蕁麻疹を発症した際に服用していた薬剤(サワシリンカプセル250)の写真を看護師に見せたが、その際も具体的な薬剤名は確認しなかった。
その後、患者は右乳房腫瘍摘出術を受け、手術後の感染予防薬としてサワシリンと同一成分であるアモキシシリンカプセル250r(4C分4)3日分が処方された。なお、その際も手術室看護師等は薬物アレルギーの有無を確認しなかった。術後数日後、患者から、前夜から全身に発疹があり薬疹ではないかと本件医療機関の救急に問い合わせがあったため、外科日直担当医はアモキシシリンカプセルの服薬の中止を伝えた上で、経過観察するよう指示した。しかし、患者は翌日になっても改善が見られないとのことで本件医療機関を救急受診し、ソル・コーテフ100rの点滴を受け、翌日に乳腺外科、皮膚科を受診するよう指示された。術後約1週間後、患者が皮膚科を受診した際、皮膚科医は全身にそう痒に伴う紅斑を認め、ペニシリン系抗生剤による薬疹の可能性が高いと診断し、ボアラ軟膏0・12%、プレドニン錠5rを処方した。また、併せて乳腺外科医は問診票にアレルギーの既往について記載があったにもかかわらず、確認不足により薬疹を発症させたことを謝罪した。術後約2週間後には、皮膚鱗屑はあるものの、皮疹は消退傾向であったため症状固定となった。
患者側からは、問診票に薬剤アレルギーの既往があった旨を記載し、また乳腺外科医にも直接アレルギーについては伝えたにもかかわらず、医療機関側の確認不足で結果として薬疹を発症し、精神的にも辛い状況に追いやられたとして、医療機関側の誠意を求める発言があった。
医療機関側としては、外来看護師がアレルギー情報を確認したにもかかわらず、アレルギー情報の登録を失念したこと、その後も複数の医療従事者が関わっていたにもかかわらず、アレルギー情報について深く追求せず、結果として患者に薬疹を発症させたことは過誤であるとの見解を示した。
紛争発生から解決まで約2カ月間要した。
〈問題点〉
患者は事前に問診票に過去に薬剤の副作用で蕁麻疹が発症した旨を記載しており、その後も複数回にわたり同内容を看護師等に伝えていた。しかし、医療機関側は結局一度も患者に具体的な薬剤名を含めアレルギー情報について深く確認することをせず、その結果、患者に薬疹を発症させたことは医療機関側の過失であり、有責と判断された。
〈結果〉
医療機関は全面的に過誤を認めて、賠償金を支払い示談した。







