2025年度税制改正では、いわゆる「年収の壁」の見直しが行われた。医療機関にも大きく関わる内容であることから、2回にわたり税制改正の概要と年収の壁について、税理士の竹内紘太朗氏に解説いただく。
25年度税制改正関連法が3月31日に可決成立し、4月1日から施行されています。国会での修正を経ての成立となり、近年にはない経過をたどりました。その税制改正関連法の中から主なものを紹介します。
【所得税】
・基礎控除の見直し
合計所得が2350万円以下の場合の控除額が58万円に引き上げ。加えて、合計所得に応じて最高37万円を上乗せする特例措置も創設。
・給与所得控除の最低保障額を65万円に引き上げ
・特定親族特別控除の創設
19歳〜22歳の親族の給与年収が150万円以下の場合、親などの扶養者において63万円が控除可能となった。給与年収150万円を超えると控除額が逓減していき、188万円を超えると控除額は0になる。
・配偶者控除、扶養控除などにおいて、被扶養者の合計所得金額要件を引き上げ
・退職所得控除の調整規定の見直し
退職金を受け取る年の前年以前9年内(改正前:4年内)にiDeCo等で一時金を受けている場合、退職所得控除を減額調整することになる。
・iDeCo等の拠出限度額の引き上げ
【法人税】
・防衛特別法人税の創設
26年4月1日以後に開始する事業年度から適用。中小法人の場合、所得が約2400万円を超えると増税となる。法人税額から500万円を控除した後の金額に、税率4%を乗じて税額を算出。
【所得税・法人税共通】
・中小企業投資促進税制
内容に変更はなく、適用期限が2年間延長。電子カルテなどを購入した際に税制優遇を受けられる可能性あり。
・中小企業経営強化税制
対象設備などを見直した上で、適用期限が2年間延長。対象設備を取得して所定の手続きを行うことにより、税制優遇を受けられる。
・医療用機器等の特別償却
対象機器を見直した上で、適用期限が2年間延長。対象機器を取得した場合に、税制優遇を受けられる。
【相続税・贈与税】
・結婚・子育て資金贈与の非課税措置
適用期限が27年3月31日まで延長。内容に変更はなく、生前贈与の一形態として引き続き選択肢となる。
以上、25年度税制改正の中から、主なものを記載しました。
物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、一定の減税がなされました。他方、増税となった項目もいくつかあります。今回の改正では所得税における防衛増税はありませんでしたが、今後は増税の波が拡大していく可能性があり、引き続き注意が必要です。
たけうち・こうたろう
2013年にひろせ税理士法人に入所し、巡回監査担当者として会計・税務・経営に関するコンサルティング業務に従事。16年に税理士登録。24年からは審理部マネージャーとして、巡回監査担当者の税務判断をサポートする等、ひろせ税理士法人が提供するサービスの品質管理業務を行う。







