自民党・公明党・日本維新の会の3党協議を経てOTC類似薬保険外しが方針化された。保険給付から除外すべきとしたOTC類似薬(保険薬)には日常診療で処方される薬剤が多く含まれている。参議院選挙では保険料を下げるという主張が大きく報道されたことは記憶に新しい。
OTC類似薬を保険から外す目的は、保険診療に制限を加えて医療費を抑制することだ。患者の外来受診控え、負担増とともに、医療の安全を脅かすものとなる。日本アトピー協会と難病患者の家族の方々は反対署名8万5千人分を集め、保団連とともに厚生労働省に申し入れを行った。日本医師会も反対を表明している。
協会は、OTC類似薬の保険外し、OTC薬処方時の技術料の選定療養化に関して会員にアンケート調査を行い、保険給付から除外することに反対の立場を表明した。国民が必要とする医療は貧富の格差なく給付される必要がある。アンケートでは、OTC薬(市販薬)の服用・使用により、副作用や重症化等で来院した患者がいるという回答が4割に上っている。医療の安全性に深刻な懸念があることも重大だ。国民生活を支える基盤として、「必要かつ適切な医療は保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を今後とも堅持し、国民皆保険制度の給付範囲を安易に縮小すべきではないと考える。
一方で、賛成意見も1割余り見られ、勤務医と開業医で異なる受け止めがある。背景には高齢化社会の現実がある。協会の基本方針は保険で良い医療と医業の実現を目指すことだ。OTC類似薬保険外しが良い医療の実現にもたらす影響も大切な論点だ。
6月に日本老年医学会は「高齢者の人生の最終段階における医療ケアに関する立場表明2025」を公表した。「すべての人は〈中略〉価値観・人生観・死生観を十分に尊重され、『最善の医療およびケア』を受ける権利を有する」と述べ、年齢による差別(エイジズム)に反対を表明し、症状緩和やQOLの確保などの重要性を強調している。OTC類似薬保険外しは高齢者医療の質を損なう危惧を感じざるを得ない。
協会はOTC類似薬保険外しに反対し、医療の質の向上のために議論を深め取り組みを強めていきたい。
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