協会は7月31日、OTC類似薬の保険外しに関して、会員アンケートの結果をもとに協会会議室で記者会見を行った。会見では内田亮彦理事長、福山正紀副理事長がOTC類似薬の保険外しは「患者の健康そのものが脅かされ、保険で良い医療という社会保障の基盤を根底から覆す」として撤回を訴えた。NHK京都、京都新聞社、時事通信社、しんぶん赤旗、京都民報各社の記者が参加。会見の模様は当日のNHK京都「京いちにち」、京都民報(8月17日付)、しんぶん赤旗(8月1日、6日付)、京都新聞(8月20日付)で報道された。京都新聞社説(8月28日付)でも取り上げられた。
福山副理事長はアンケートの報告に先立ち、OTC薬、OTC類似薬、スイッチOTC化※などの用語を説明した。アンケートでは約7割がOTC類似薬の保険外しに反対したと述べ、実際にOTC薬を服用・使用し重症化して来院する患者がいたと回答した会員も4割に上ると紹介した(アンケート結果は協会ホームページに掲載)。OTC類似薬の保険外しは患者の健康や医療の安全を脅かすだけでなく、その流れで狙われているOTC薬を処方した際の技術料の選定療養化は保険給付の縮小と患者負担の増加につながり、実質的な混合診療の拡大となると指摘。医薬品供給の安定化も含めて国へ訴えていきたいとした。
さらに保険外しは、指定難病などの公費負担医療制度、子育て支援医療などの福祉医療で医療費負担が軽減されている人にも過大な自己負担となると問題視。生活保護受給者への影響も甚大で、受診を躊躇し命の問題に直結すると強調した。記者との質疑応答は別項。
記者からの質問に応じる内田理事長(右)と福山副理事長
記者との質疑応答(要旨)
保険外しで患者負担が3割から10割になるとのことだが、具体的にどの程度か。
――病状や科目にもより、処方薬と一般薬の薬剤の価格自体が異なるので単純比較はできないが、厚労省調べでも自己負担が10倍以上になるという試算が出ている。一般薬は処方薬と同一成分でも添加物や含有量が異なり、医薬品自体の質の違いもあり、価格だけの問題ではない。
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保険外しが受診抑制にどうつながるのか。
――処方してもらえないのであれば受診する意味がないと捉える患者が出てくる。だが、患者はコロナかインフルエンザかRSウイルスかどれに感染しているのかを自己診断できない。診断が確定されなければ適切な治療につながらず、重症化も懸念される。
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医師がOTC薬を処方した際の技術料を選定療養化するというのはどういうことか。
――今は原則、保険診療と保険外診療を併せて行う混合診療が認められていないため、医師は保険診療でOTC薬は処方できない。そのため、医師がOTC薬を処方した際に、OTC薬は全額自己負担、医師の技術料や診療料を選定療養(差額ベッド代、予約診療などと同様の仕組)にして混合診療にならないようにしようと国は考えている。
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生活保護受給者への影響とは具体的にどのようなことか。
――生活保護受給者は選定療養が使えない。OTC薬を処方した際の技術料が選定療養化された場合、生活保護受給者にとっては医師の診療料も含めて全て自己負担になり影響が甚大だ。
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手軽に入手できる医薬品でも使用方法を間違えば重症化するとのことだが、具体的にはどのようなことが想定されるか。
――例えばロキソニンによる消化管穿孔、オーバードーズで意識消失、白癬にステロイド外用を塗り悪化―などが考えられる。
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自民・公明・維新の3党合意で示された保険外しの28成分の中で特に影響が大きいと考えられるのはどれか。
――どれも影響はある。一般的によく使われる医薬品だからこそ、どれも影響が大きい。
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保険外しは患者への影響が大きい。国への働きかけは。
――厚労省への要請と同時に、実際の医療費削減は財務省が考えていることでもあり、財務省への働きかけが必要と考えている。何よりも市民や世論に保険外しが現実になれば困ると理解してもらうことが国への働きかけへの後押しとなる。
NHK京都「京いちにち」(7月31日放送)
※OTC薬 市販薬。医師の処方箋なしで薬局などで購入できる一般用医薬品。
OTC類似薬 保険薬。医療用医薬品がOTC薬にスイッチ(切り替え)された後も、引き続き医師に処方されている元の保険適用の医薬品。
スイッチOTC化 医療用医薬品として長年使用され安全性や有効性が確立された成分をOTC薬として販売できるようにすること。