私のすすめる 立たない体操 時や場所を選ばず 好きな時に好きなだけ西村 茂(福知山)  PDF

心不全に対する足踏み体操の有効性は広く認知され、電動式の機械も市販されています。フレイルやロコモで立居振る舞いの不自由な人たちがシャキッとなる簡単な方法はないものかと、長年の思案の末に次のような体操を考案しました。それは「立たない(立てない)体操」です。
普通の椅子に浅く腰掛け、両膝の上に手のひらを置きます。両手が膝の上になければ簡単に立ち上がれますが、両膝を両腕で抑え込む格好になるので、全く立ち上がることはできません。この状態で10秒間全身に力を入れて、立ち上がろうと頑張ります。呼吸を止めたり、全力を出したりする必要は全くありません。10秒間力んで10秒間休む動作を何度も繰り返すだけの運動ですが、両腕、両足、腰、腹筋、背筋などの総ての筋肉が、緊張と弛緩を繰り返します。膝や腰が痛くて散歩などが十分にできない人でも、立ち上がりもしない運動なので、起坐可能なら誰でもできます。テレビ鑑賞中や本・新聞などを読んでいる時は手が空いているので、時や場所を選ばず、その気になればすぐ始められます。全身の筋肉の緊張と弛緩により、筋肉が鍛えられるとともにカロリーも消費されます。
単純な動作ながら何十回何百回と重ねれば、立派に筋肉痛にもなります。意外と腹筋によく効くので、メタボの方々にもお勧めです。後期高齢者、認知症、糖尿病の人たちにこの新体操を勧めていますが、なかなか続けてくれません。一番の問題点は意欲で、「元気で歩けるようになろう」「メタボから脱却しよう」という積極性に欠けるのです。私自身はこの体操を数年来続けているせいか、若い頃のズボンが現在もはけています。起坐さえも不可能な準寝たきり状態の患者さんには、足踏み体操やベッドの中での手足の屈伸運動の指導をしています。
道具も金もいらず、時間も場所も問わず、好きな時に好きなだけやればいいこの体操を多くの皆さまに体験していただき、確かな効果が認められれば、京都発の新体操として全国に広まれば幸いと考える昨今です。

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