AI診療法的責任は医師 医療安全講習会  PDF

協会は医療現場でもAI技術が普及し始めている状況を受け、AIを用いた診療とその法的責任などについて、医療安全講習会「医療AI技術の普及と医療水準」を5月31日に開催した(協会会議室とウェブ併用)。講師は創価大学法学部講師の船橋亜希子氏。本講習会は全国の保険医協会・医会会員医療機関にも参加を呼びかけ、95人が参加した。
船橋氏は厚生労働省医政局医事課長通知「人工知能(AI)を用いた診断、治療等の支援を行うプログラムの利用と医師法第17条の規定との関係について」(平成30年12月19日)を紹介。AIを利用して診断を行う場合でもその主体は医師であり、最終的な判断の責任を負うとの通知内容を示し、医行為の主体が医師である限り、医療AI技術に関連した医療過誤事件でも医療水準が問題になると述べ、医療水準の基本的な考え方について解説した。

AI主体には懐疑的

医療AI技術が実装され医行為の主体が医師から医療AIに変化する過程を次のような段階に分け解説した。第一に、診療支援として医療AI技術が利用される「探索期」。第二に、医療AI技術が医師の能力と同程度、または医師の能力を超えていく「協働期」。第三に、医療AI技術が医師の能力を有意に超え医師に代わる「自律期」。そして「探索期」と「協働期」には、医師と医療AIのどちらが優先されるか判断が難しい「移行期」という段階が含まれると説明した。
特に「協働期」における医師から患者への「説明」の場面では、医療AI技術の利用の有無、医師と医療AIの見解が異なる場合にその結論に至った根拠などの説明が必要とした。さらに医療AI技術を用いていない医療機関ではその旨の説明とともに、医療AI技術による診療などを希望する患者には転院やセカンドオピニオンのための紹介も求められるだろうと述べた。
「移行期」においては、医療AI技術がチーム医療の中で一定の役割を担うことでワークフローが変化し現場に混乱が生じる可能性があると述べた。このような混乱の中でチーム医療を安全かつ円滑に行うために医療者間の情報共有が今まで以上に必要になり、医療従事者の業務量が増加すると懸念を示した。
最後に船橋氏は、将来、医師が医行為の主体を医療AIに譲り渡すのか、患者は医行為の主体が医療AIに代わることを受け容れるのか、医療AIは医師に代わって患者との関係を構築できるのか―の観点から、医行為の主体が医師から医療AIに代わることに対して懐疑的であると語った。その上で、実際には医療AI技術との「協働」が現実的だと述べた。

ページの先頭へ