なんでも書きましょう広場 OTC類似薬のゆくえ  PDF

政策部会部員 礒部博子

4月、社会保障改革に関する自民・公明・維新の3党協議が行われ、6月11日にはOTC類似薬の保険適用除外に関する3党合意が発表されました。この内容は6月13 日に閣議決定された「骨太の方針」の中にも反映されていて、3党合意では保険給付から除外する具体的な薬剤名として28有効成分も示されています。政府はさっそく2026年度からOTC類似薬を公的医療保険の適用除外とする方向で調整しようとしていて、副作用などを考慮した上で品目ごとに判断されるようです。
現在想定されている品目が除外されれば年間医療費が3500億円削減されると試算されていますが、医療費全体に占める割合は100分の1以下なのです。
OTC類似薬の保険適用除外問題に関しては大きく分けて三つの問題点を指摘することができます。
一つは医療機関への受診控えによる健康被害の拡大です。3党合意ではセルフメディケーション推進の観点からスイッチOTC化を進めるとしていますが、セルフメディケーションを推進するにはまず、いつでも安心して安価で医療機関を受診できるという前提が必要なはずです。
二つ目は薬の適正使用が難しくなるという点です。保険適用外となり、高価な薬が増えると必要な医薬品が出せなくなると考えられます。
三つ目は自己負担の経済的増加です。この問題に関しては特にもともと自己負担の少ない高齢者や乳幼児に対する影響が大きく、子育て支援の方針とは逆行することになります。
社会保険料を引き下げるために適切な受診機会を奪うような提案は論外ではないでしょうか。
OTC類似薬の保険適用除外は医師による診断処方という医療行為そのものを否定することにつながりかねない問題で、「保険あって給付なし」の状況を作り出し、国民皆保険制度を形骸化させるものです。
国が推進するセルフメディケーションの真意とは公的医療保険を守るためにとりあえず個人で適当な薬を買い、保険を使わず勝手に治療して下さいということでしょうか?

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