医会寸評  PDF

季節ごとに色を変える、京都。4月は桜のピンク、5月は若葉の緑。初夏には藤、七夕の頃は紫陽花(アジサイ)やアサガオ、キキョウなどが咲き誇り、街は紫の装いに包まれる▼藤は古来より多くの人々に愛されてきた。「源氏物語」にも登場する「藤壺」は坪庭に藤が植えられていたことによる名称である。また「枕草子」の「めでたきもの」の中には「藤の花の松にかかりたる」が挙げられている。夏の初めのさわやかな風にそよぐ藤の風情はいかにも優雅であり、花穂の美しい紫色は、いにしえから人々を魅了していたのである▼紫は古くから洋の東西を問わず高貴な色として尊ばれてきた。この高潔な色彩は医療が目指す崇高な理念と深く共鳴する。医療では性別、年齢、社会経済的地位にかかわらず、全ての人々が平等にサービスを受けられることを理想とし、現に世界保健機関(WHO)も医療機関に対して、弱い立場にある人々への特別な配慮を求めている。この理念は紫色の高潔なイメージそのものである▼平安時代の貴族たちは紫の衣を身にまとい、「源氏物語」においても紫は象徴的な意味を持ち、「枕草子」での春のあけぼのに京都の東山の山際で細くたなびく雲は紫色であった。京都府保険医協会のウェブサイトにも紫色が多用されている。今も昔も京都の街には紫がよく似合う。(clear)

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