協会は第三者承継・閉院セミナーを3月13日にM&D保険医ネットワーク※と共催でウェブ併用で開催した。参加者は17人。
第1部ではエニータイムヘルスケアコンサルティング鰍フ牟田修氏が第三者承継、第2部ではR&Tメディカル鰍フ杉谷孝史氏が閉院について解説した。
第1部で牟田氏は開業医の高齢化を背景に地方の後継者不足の深刻化を説明。2019年の帝国データバンクの調査では後継者がいない医院の比率は85%で、全業種平均65%を上回ったと述べ、地域医療を守る観点からも第三者承継は有効な選択肢の一つとした。事業承継の課題として、売り手側では後継者を探す方法も相談する相手もいない、買い手側では譲渡希望価格が合わないなどを挙げ、自社のM&Aの流れを基本にコンサルティング会社へ依頼する場合の注意点や活用点を解説した。注意点として、契約方式が依頼した仲介会社とのみM&Aを進める専任契約か、複数の仲介会社と契約できる非専任契約か確認する必要性を強調。活用点として、譲渡価格評価によって自院の価格決定の参考にできること、売り手買い手ともに匿名で条件のみを提示しマッチングが行えることなどを挙げた。自身が関わったM&Aの失敗、成功事例も紹介した。
第2部で杉谷氏から閉院の流れを解説。テナント開業の場合、テナントの原状回復工事が必要となり、22年4月1日以降に着工する解体・改修工事は石綿に関する事前調査が義務化されたため、少なくとも閉院の3カ月前には事前調査の発注が必要と述べた。また、事前調査発注と同時にテナント解約の申し込み、従業員への周知、2カ月前には患者へ案内、紹介状の準備、閉院時に保険医療機関廃止の手続き、閉院後にテナントの原状回復工事の開始―の流れを紹介した。閉院時の注意点として、書類等保管先の確保、医薬品の処分、医療機器などの残置物の処分などを挙げ、特に医療機器はリースかどうかなどの確認も必要と述べた。医療機器等の撤去作業時の事例を紹介し、電源ケーブルの穴が残存する場合や流し台下の給排水設備の撤去は一般的に撤去前に出される解体撤去工事の見積りに含まれないため別途費用を要すると説明した。
※M&D保険医ネットワークは全国34以上の都府県の保険医協会が参加する共同購入事業。大阪府保険医協同組合の100%資本で運営する大保協商事鰍ェ窓口となり、大阪府保険医協同組合が扱う購買事業の商品の多数を取り扱っている。
講師の牟田氏(上)と杉谷氏