主張 財務省の医療政策先導に疑義  PDF

2024年度診療報酬改定で、脂質異常症・高血圧症・糖尿病がなぜか特定疾患療養管理料対象疾患から除外となり、生活習慣病管理料算定時の患者との文書契約が日常診療で常態化、定期的な交付が算定要件となった。医療DX進捗に伴う頻回の届出直しの必要な施設基準が新設された。診療に無関係なベースアップ評価料が新設され、マイナ保険証利用率で毎月請求金額が変わる医療DX推進体制整備加算もある。そして毎年の薬価改定。診療に無益な業務ばかり増えてきた。
 2023年11月に財務省が「機動的調査」を公表。2020年度から2022年度までの医療法人事業報告書等の調査で、「医療法人診療所は2022年度の経常利益率が8・8%で2020年度の3・0%と比べ大きく儲かっている」との資料を提出。診療報酬のマイナス改定の根拠とした。
 何かおかしい。2020年度はコロナ流行初期、診療が抑制されていた。他方2022年度はオミクロン株等の流行による感染者数の爆発的増加、発熱外来の設置、抗コロナ薬の臨床供与、コロナワクチン公費接種等で医療機関は多忙を極め、支援金等の支給もあった。この時期の調査で開業医は「儲かっている」ので、診療報酬はマイナス改定しても賃上げは可能とされた。なぜ2020年度と2022年度の比較だったのか? 保険医協会はこの「機動的調査」に疑問を抱き、京都府の資料を基に調査中である。
 改定を見送られた高額療養費制度に影響する高額薬剤の不透明な薬価決定法。医師偏在対策のためとされる医師過多区域での開業規制。医師過多のため過剰な医療が提供されるというが適切な医療とは何か? 経済集中で昼間人口が定住人口に比し著増する地域に医療機関が集中し医師過多と評価される(医療過多かは不明)。医師偏在対策には人口偏在対策、経済偏在対策が必須である。財務省は厚労省の頭越しに医療政策を先導、中医協での審議決定を待たずに診療報酬を決定している。今後も「機動的調査」のように自らの調査を基に政策を進めるなら、根拠となる資料の透明性のある開示が必要である。

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