“闘う実践者・科学者”の「言葉」の記録 コロナは医師だけでは乗り越えられなかった 対応を検証し、パンデミックや災害時に備えたい  PDF

体験記『コロナ禍の医師たち』 シンポジウム

 協会は体験記『コロナ禍の医師たち―記憶と記録がこれからの感染症対策の出発点に』(7月1日発行)をもとに、市民向けシンポジウムを11月2日にハートピア京都で開催。ウェブ含め73人が参加した。「福祉政策研究者が読んだ『コロナ禍の医師たち』」と題して、佛教大学社会福祉学部教授の岡祐司氏が講演。パネルディスカッションでは(一社)右京医師会の寺村和久氏、(一社)宇治久世医師会の堀内房成氏、(一社)相楽医師会の山口泰司氏から地域の取り組みを報告後、今後の課題を意見交換した。コーディネーターは吉中丈志理事。

 鈴木卓理事長は「第10波、第11波が起こっているが、国はコロナを終わったことにしようとしている。最前線で何があったのか、何に苦労していたのかを検証し解決していかなければ、新たな対策にならない。同じことを繰り返さないために、足元から取り組みたい」とあいさつした。
 協会はシンポジウム開催にあたり、地区医師会にコロナ禍の地区の取り組みアンケートを実施した。地区医師会で独自で行った取り組み、京都府や市町村から要請のあった事業への取り組みについて聞いた。独自の取り組みでは、病診連携で発熱外来設置が4地区、検査センター設置が2地区あった。地区医師会は国や市町村から物資の配布、検査、ワクチン接種などさまざまな事業の要請を受けて懸命に実施したが、地域によって対応できなかった現状があった。医療提供において格差が生じていたとも言え、行政の支援強化が必要である。

地域での関係づくりが地区医師会活動の要
―パネルディスカッション
 吉中理事より、コロナ禍を経て、国が新たな地域医療構想を進める上で注目すべきがかかりつけ医機能だが、地区医師会の今後のあり方の視点からどう見ていくべきかと問題提起した。パネリストからは、「全ての開業医がかかりつけ医を担うのは困難で、そこを支援・連携するのが地区医師会の役割だ」「患者と医師は関係構築の上で、かかりつけ医だと認識する。地区医師会の団結力や機動力があれば、発熱外来やワクチン接種が可能になる。地域住民のためにも地区医師会がさらに連携し発展していかなければいけない」などの意見が出された。
 かかりつけ医は診療報酬上でシステマティックに固定されるものではなく、ましてや医療費抑制のためでもないとした上で、地区医師会の機能がますます重要になるとの認識が共有された。

「語り尽くせないほど多くの人と力を結集してコロナと闘った」とパネリスト

右  京「病院の協力を得て発熱外来を設置」
宇治久世「全ての人が力を合わせ抗う勇気」
相  楽「高齢会員や内科以外の会員も総出で対応」

 寺村和久氏(右京医師会) 京都民医連中央病院の協力を得て会員が出務する形式の発熱外来を設置した。大規模住民向けワクチン接種、在宅患者の訪問診療など、会員が自院の夜診後や休日に対応した。高齢者施設のクラスター発生時は初期対応が重要になる。京都市で初の高齢者等新型コロナ医療コーディネートチームを結成して対応した。クラスターに対する危機感が薄れつつある今、コロナは終わった感染症ではないという再認識が必要だ。
 堀内房成氏(宇治久世医師会) コロナ禍に必要だったことは行政や医療、介護など全ての人が力を合わせ抗う勇気だ。ワクチンのマッチング、休日診療所での抗原検査、ドライブスルー検査所への出務、保健所と連携した在宅診療、FMうじでの市民向けの啓発活動など行った。介護職員、施設職員、訪問看護師、保健所の所長や保健師など、多くの人とともに闘った。コロナ禍で犠牲になった医療・看護・介護関係者の命への敬意を忘れず、経験を新興感染症や災害時に活かしたい。
 山口泰司氏(相楽医師会) 発熱外来を2カ所設置した。府内で最も早く医療従事者ワクチンを集団方式で実施。手順に慣れ住民の集団接種や個別接種へと広げた。自宅療養患者の経過観察は高齢会員や内科以外の会員も総出で対応した。薬剤師会と連携し、薬難民が起きないように自宅療養者への薬剤配達も実施した。医療資源の絶対数が少ない地域だが、使命感と手探りで取り組んだ経験を今後のパンデミックや大規模災害で応用できるよう検証し洗練したい。

上から寺村氏、堀内氏、山口氏

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