高額療養費の限度額引き上げ撤回を 生命を脅かす改悪は許されない  PDF

石破首相は3月7日、高額療養費の負担限度額引き上げの8月実施を見送り、今秋までにあらためて方針を検討し決定すると表明した。患者団体や保団連・各地協会など医療関係者から撤回を求める世論が急速に広まり、3度目の方針転換に追い込んだ。協会はさらに計画そのものの撤回を求めていく。

抗議収まらず
8月実施見送り

 政府は高額療養費の自己負担限度額を2025年8月から3段階で引き上げることを、25年度予算案に盛り込んだ。引き上げは全ての年代、全ての所得階層を対象とし、予定通り行われれば27年8月に平均所得層で最大5万8500円(1・73倍)もの大幅引き上げとなる。
 国は当事者の意見を聴く機会を設けず、わずか1カ月弱で引き上げ方針を決めた。治療中断を余儀なくされると訴える患者団体と面会したのは2月中旬になってからであり、「多数回該当」のみを据え置く微修正で乗り切ろうとした。
 石破首相は2月28日の衆院予算委員会で、患者団体との対話が不十分だったことは認めた。だが、8月の引き上げを予定通り実施し、26、27年度に予定する2段階目以降の引き上げのあり方を再検討するとの「一部見直し」にとどめ、立ち止まろうとはしなかった。予算案は3月4日、自民党、公明党、日本維新の会の賛成で衆議院を通過し、参議院に送られた。
 ところが、夏の参院選を控えて与党内からも批判が上がり、異例の3度目の修正となった。

首相らに中止を要請撤回求め会員署名も

 協会は2月25日、高額療養費の自己負担限度額引き上げ中止を求める要請を石破首相、福岡厚労相に送付。
 要請は、がんや難病など重篤な疾患や長期に治療が必要な患者が高額な医療費負担によって治療の継続が脅かされないようにする高額療養費制度の役割からすれば、現在でも十分とは言えない。これをさらに弱めるような今回の引き上げは断固として撤回を求める―とした。
 また厚生労働省資料に、いわゆる長瀬効果で約2270億円減(実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果)を見込んでいることについて、生命を脅かす治療中断を織り込み済みであることを批判した。
 会員からFAX緊急署名141筆を集め、3月13日に国会要請を行った。署名には、▼命に直結する改悪は許されない▼見直すべきは高額薬価であり、高額療養費見直しは人道上問題だ▼負担引き上げ前に国会議員の定数削減等やるべきことがある▼経済的事情で治療の機会を奪うことのないよう撤回を求めます▼あまりに乱暴なやり方です。撤回を求めます―などの声が上げられた。

安心して治療が受けられる国に

 3月5日には京都社会保障推進協議会による四条烏丸での街頭宣伝に協会も参加し、改悪撤回を訴えた。
 協会からは、自身ががん患者の医師からの訴えを紹介。闘病、休業で経済的に苦しい中で高額療養費に助けられたが、再発すれば閉院・売却もやむなしとし、医療費や生活費に不安な中での制度変更に非常にストレスを感じていることを訴え、治療を諦めてしまう方がいることを分かっていながら強行する国の姿勢を批判した。その上で、限度額はむしろ引き下げて、経済的に安心して治療が受けられ、退院後も治療を受けながら仕事ができる環境整備を強く国に求めた。

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