先発医薬品(長期収載品)の選定療養の状況
実施日=2025年1月30日
対象者=106人、回答数=68人(回答率64%)
2024年10月から先発医薬品(長期収載品)の選定療養が導入されたことを受けて、標記のアンケートを第208回定時代議員会で実施した。8割以上が選定療養導入に「反対」し、6割が医薬品の流通改善を望んでいることなどが分かった。
まず、主に院外処方か院内処方か質問したところ「院外処方が主」53%、「院内処方が主」47%であった。
「院外」処方が主の回答者の傾向
「院外処方が主」と回答した方に選定療養導入で悪い影響があったか質問したところ、「悪い影響はない」54%、「悪い影響があった」46%であった。
「悪い影響がない」理由は図1の通り(複数回答)。医療機関の対応によりトラブル等は生じていないとうかがえるが、「制度変更の趣旨を理解している患者が多い印象」は回答者の約1割にとどまった。
一方、「悪い影響があった」理由は図2の通り(複数回答)。回答者の80%以上が「レセプトへのコメント入力・記載で事務量が増加した」と回答した。「差額徴収に患者が納得しない」も53%あった。
「院内」処方が主の回答者の傾向
「院内処方が主」と回答した方に選定療養導入で悪い影響があったか質問したところ「悪い影響はない」48%、「悪い影響があった」52%であった。
「悪い影響がない」理由は図3の通り(複数回答)。ここでも医療機関の対応によりトラブル等は生じていないとうかがえるが、「趣旨を理解している患者が多い印象」と回答した方がいないことが特徴的だ。
一方、「悪い影響があった」理由は図4の通り(複数回答)。ここでも回答者の77%が「事務量が増加した」と回答した。
患者からの反応、医療扶助対象者への対応など
選定療養導入により患者の反応や薬局からの報告で印象的なものがあるか質問した。27件の回答中「特になし」は10人。その他「ジェネリックは効果がない。患者からの信頼を失う恐れ」「後発品への変更や銘柄変更で思いのほか、味、呑み安さ、薬効の変化、消化器症状等出現した事例あり」「院内に準備していない特殊な薬を処方する時は院外処方にせざるを得ず、その際に患者への説明に時間がかかり理解されないことがある」「点眼でひどいアレルギー性眼瞼炎を起こした」「制度が分かりにくい」「一般名処方をしているが、後発品がないのか、全ての処方薬が先発品に変更された」「なぜ負担が増えるのか、どうしても理解できない人がいる。それに対して合理的な説明が難しい」等の意見が寄せられた。
また、生活保護医療扶助の患者は従前から後発医薬品の処方が原則となり選定療養が使えないことから、対応に困った事例があるか質問した。26 件の回答中、「特になし」は11人。その他「人権問題だ」「後発品の不足で先発品を使わざるを得ないことがあり、コメント記載の作業が大変であった」「後発品が品薄で薬局にないことがある」「先発品希望者に対する方法がない。自費も不可と言われた」「生活保護者は後発品が原則なのは周知されていない印象」「先発品の希望が一定数ある」等の意見が寄せられた。
反対理由5割「後発医薬品品質懸念」
選定療養の導入の是非を質問したところ、「賛成」16%、「反対」84%であった。
「賛成」の理由は図5の通り(複数回答)。9人が「無駄な医療費は削減すべき」と回答した。その他「AGを選択するようにしている」「一般薬化も進めるべき」等の意見が出された。
「反対」の理由は図6の通り(複数回答)。55%が「品質に懸念のある後発医薬品が多い。後発医薬品は信用できない」と回答した。
その他「事務作業が増える」「先発と後発でほとんど薬価差がない薬もコメント入力する必要があり、時間と手間が無駄」「後発品の確保がままならぬ状況での導入は順序が違う。選定療養を強要する前に後発医薬品の流通を守る政策をしっかり打つべきだ」との意見が出された。一方で、「患者が先発品を望むなら後発品との差額を患者から徴収すればよい」との意見もある。
6割が医薬品の流通改善を望む
この問題について改善を望む内容を質問した結果は図7の通り(複数回答)。
60%が「後発医薬品を中心とした医薬品の流通改善」を望んだ。その他「現場に丸投げしているが、国が国民に説明すべき。患者との信頼関係にも影響」「一般薬化を進めた上で医院でも売れるようにするべき」との意見も出された。
回答者の84%が選定療養導入に反対した結果を踏まえ、協会は今回のアンケート結果を厚労三役、中医協全委員、国会議員等に送付し、医療機関が直面する問題点を訴え、選定療養の撤回を求める。
図1 「悪い影響はない」理由(院外処方)
図2 「悪い影響があった」理由(院外処方)
図3 「悪い影響はない」理由(院内処方)
図4 「悪い影響があった」理由(院内処方)
図5 「賛成」の理由
図6 「反対」の理由
図7 先発医薬品の選定療養の導入について、運動などによって改善が望まれる内容