保険医協会も参加する京都市の保健福祉を考える実行委員会は市の実施したパブリック・コメントに意見を提出した。
“守りに徹し市民から遠く”前市政を評す
市民に開かれた市役所への決意に期待
新市長による初の本格的な政策文書である「新京都戦略(骨子)」につき意見を述べる。
「骨子」には全体として明るい決意が漲っており、期待している。とりわけ「しごとの仕方改革編」における「長年の歳出削減に軸足を置いた取組が、職員の縮み志向を生んでこなかったか」「直面する危機を克服するため、政治判断を繰り返す中で職員の創造性やチャレンジ精神を阻害してこなかったか」「守りに徹するあまり行政組織を固く閉じてしまい、市民社会との距離を作ってしまわなかったか」という分析は前市政への率直な評価にもなっており、高く評価したい。
私たちは2014年以来、前市政による「児童福祉センター・(旧)身体障害者リハビリテーションセンター・こころの健康増進センター」の3施設一体化方針に対する批判的提言や住民署名等の運動に取り組んできた。その立場からは、前市政の手法はあまりにトップダウン型であり、その行政は「住民の福祉の増進」ではなく「歳出削減」それ自体が目的化しているように見えていた。前市政は財政の「持続可能性」のためといって保健・福祉にも切り込み、福祉を「受益」と見なし、子どもや障害のある人たちの権利保障にかかる行政サービスまでコストカットの対象とした。小学校や公共施設を次々に再編・統合・廃止し、跡地を外資系企業のホテルに使用させた。公衆衛生行政の拠点である行政区単位の保健所を全廃した。これらは市の「人権を守る能力」が衰退していく姿そのものであった。
これらを住民の意思・願いと無関係に強行してきた、固く閉じられた市役所が「骨子」の取り組みを通じて市民に向けて開かれることを心から歓迎したい。
関連して「骨子」が「公共資産」を市民のものと再確認し、「管理運営についても、市民や地域団体が主役」と明記して「庁舎施設の保有量削減にかかる数値目標を撤回」することを表明したこと、「事務事業評価」の見直しに言及したことにも敬意を表したい。
その上で最低限、以下の点につき(骨子)を補強していただきたい。
@ 「骨子」にあるように、保健・福祉ニーズも含めた「公共課題」は「複雑化・多様化」しており、行政の力だけでは解決が難しいケースも多い。だが公共課題の解決は「公」の責任(公的責任)によってなされるべきものであり、それこそが自治体の基本的な役割である。その原則を踏まえた行政を求めたい。また統合された行政区単位の保健所機能の再生等、住民により身近な行政の回復も必要である。そのためにも市の職員数は「削減目標を設けない」だけでなく増員していただきたい。
A 「COCO・てらす」が子どもたちや障害のある人たちをはじめ、全ての市民にとっての社会保障拠点となるよう、人員体制増・専門性の引き上げに努めていただきたい。
B 「児童福祉の金字塔」である児童福祉センターや「市リハセン」跡地は、市民の保健・福祉増進以外の目的に流用しないでいただきたい。
「骨子」は「行政が間違えることはあり得ない」「現行の制度や施策は間違っていない」といった行政の「無謬性」を否定した。私たちはその姿勢を厚く支持する。今後の施策展開をとても楽しみにしている。
2025年1月10日
京都市の保健福祉を考える
実行委員会
委員長 渡邉 賢治