医療安全講習会講師 福山 勝紀 弁護士  PDF

カルテ開示請求など日常診療の困りごとへの対応を解説

講習会内容
裁判所・警察からのカルテ開示請求
遺族からのカルテ開示請求
遺族への説明義務
賠償請求できる期間、カルテ保存期間
口コミの削除方法
リフィル処方箋のトラブル時の責任の所在(現在考えられる法的問題)

 協会は24年11月30日に「今さら聞けない!日常診療における患者対応のあれやこれや」をテーマに第1回医療安全講習会をウェブ併用で開催した。講師は協会顧問弁護士であやめ法律事務所の福山勝紀氏。本講習会では「日常診療における医療安全お役立ち手帳(23年発行)」をテキストに、上記のテーマについて解説し、他府県の保険医協会・医会会員医療機関も含め187人が参加した。参加者からは特に以下のテーマについて多くの質問が寄せられ、関心の高さがうかがえた。
警察へのカルテ開示
 福山氏は、カルテ開示請求があった際には個人情報保護法に基づき本人の同意を得た上で応じなければいけないが、同法に規定されている「法令に基づく場合」には本人の同意なく第三者に開示することができると説明した。
 刑事訴訟法に基づく警察からの捜査関係事項照会書について、患者の不審死や事故に巻き込まれた場合などに医療機関に診療情報の開示を求める文書であり、警察から電話など口頭で患者の情報を尋ねられた場合は回答を断り、必ず捜査関係事項照会書を求めるよう参加者に呼び掛けた。本照会書による開示請求は「法令に基づく場合」に該当するが、あくまで任意の手続きであり、開示を断っても罰則はない。しかしその場合、捜索差押えという強制手続きに進む可能性があるため、開示に応じる方が賢明である。なお、患者が生存している場合は患者本人から同意を取った上で開示する運用が適切であると解説した。
カルテの保存期間
 カルテの保存について、閉院の区別なく完結の時から5年間の保存が義務付けられていると述べ、5年経過したカルテを逐一廃棄できることではないと解説した。また、カルテは裁判になった際に重要な証拠となるため、過去に賠償請求やクレームがあった患者のカルテは閉院後であっても5年以上の保管が望ましいとした。
 質疑応答では、警察からの開示請求に関して、患者本人が死亡している場合の対応については捜査関係事項照会書が送られているのであれば開示して問題ないと回答。また、カルテの保存期間の起算日については、基本的に「完結の日」とは最終診療日と考えられ、最終診療日の翌日から起算し保管してほしいと答えた。
 本講習会の模様は協会ホームページに掲載しているのでご活用いただきたい。3月1日には本講習会のPart2を開催する。ぜひご参加いただきたい。

講師の福山氏
本講習会のオンデマンド配信はこちらから

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