顔見世が終わり、今年も残すところわずかになった。今年は元禄忠臣蔵が掛かっていたが、忠臣蔵の代表と言えば仮名手本忠臣蔵であろう。国立劇場創立20周年記念公演の時、戦後歌舞伎の集大成と3カ月の全段通しで、先々代の仁左衛門など当時の名優をそろえて行われたのを思い出す。両国橋引き上げの場は、50余人の役者が舞台上に居並ぶ、こんなことは国立劇場だからこそ、国立劇場でしかできないことと思われる。50周年の時にも同様に一流どころ総出で行われた▼その国立劇場が建て替えで休館になり、1年以上経つのに、いまだ解体工事も始まっていないという。本来国で責任を持って行うべき、日本の伝統的な芸能に欠かせない場の維持であるのに、PFI(Private Finance Initiative民間資金を活用した社会資本整備)で民間の収益施設を入れてその上がりを利用しようとしている。民間は商売として成り立つかどうかで動くのであるから、それが難しいとなれば慈善事業でもない限り簡単に乗ってくるものではないだろう▼国として為さねばならないことは、民間活力の利用などと言わず、国として責任を持つことであろう。医療を含む科学の基礎的研究なども同様である▼能登半島地震で明けた今年、世界的にもきな臭いままだが、来年は少しでも穏やかでありますように。(門雀庵)
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