医界寸評  PDF

 厚生労働省は、11月30日を“いい看取り・看取られ”と語呂合わせで「人生会議の日」と定め、人生の最終段階の医療やケアを考える日としている。我が国の高齢化率は29%を超え、人生の最終段階にある人が増加、認知症などで意思決定能力が十分でない人も増加し、終末期では約7割の人が決定能力が十分ではないとされる▼したがって決定能力が十分でなくなっても、本人の意向を尊重した医療・ケアを提供しうるACP(前もっての計画)がなされていることは理にかなっている▼しかしながら、ACPの認知が広がっているとは言い難い。2023年12月の厚労省の調査で、ACPをよく知っている人は一般国民の5.9%に過ぎず、医師や看護師ですら46%弱にとどまっている。ACPは個人の自律性が高い欧米に端を発している。家族中心で意思決定を行うことが多く、個人の自律的な決定が容易ではない日本にはしっくりこないことが浸透しない理由かもしれない▼また、ACPは繰り返し話し合う必要があり、時間と手間がかかることや本人の最期について何度も向き合うことになるので、本人や家族にとって辛い体験になってしまう可能性もある。しかし推計より2年早い2022年に、日本は多死社会に突入したとされる。本人の意向の尊重のためにACPの広がりが望まれる。(京凡人2世)

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