主張 長期収載品が選定療養対象に後発医薬品は在庫不足の懸念  PDF

 10月より長期収載品が選定療養の対象になった。選定療養とは保険適用外の治療やサービスを保険給付と併せて受ける制度である。特別の療養環境(差額ベッドなど)に対して患者が自ら希望して選ぶ療養で、保険適用外部分として追加費用を患者が負担する制度となる。
 政府が新たに選定療養として掲げたのは、先発医薬品のうち一定期間が経過し、代替の後発医薬品のある長期収載品で、後発医薬品のある先発医薬品に対し、その差額の4分の3を保険適用の部分とし、4分の1を患者が自己負担する。つまり差額の4分の1の負担増を選定療養に組み込む制度改革である。
 今回の長期収載品の選定療養への組み込みは、後発医薬品の使用の強要であり、先発医薬品から後発医薬品への移行を促進させる。しかし現状の後発医薬品の治療・効能の評価や在庫状況などの問題点を踏まえた検討・議論などはなされておらず、一方的な押しつけだ。政府は長期収載品の選定療養の事務連絡・疑義解釈を発表し、長期収載品の「医療上の必要性」の判断基準や具体的計算方法、公費負担医療の取扱いを示した。
 長期収載品の必要を見込める場合は5項目がある。 先発医薬品と後発医薬品で薬事上承認された効果・効能に差があり、医師が先発医薬品の使用を判断する場合 副作用や他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があると医師が判断する場合 学会が作成するガイドラインで、長期収載品を使用している患者に後発医薬品へ切り替えないことを推奨している場合 後発医薬品の形状では飲みにくい、吸湿により一包化できないなど、形状の違いにより長期収載品を使用する必要がある場合(ただし、患者の形状の好みにより長期収載品を選択する場合は含まれない。つまり理由なく長期収載品の希望は認められない) 院内処方では在庫状況を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合―という理由だ(ただし5番目の項目は院外処方では認められない)。これらの長期収載品を選定療養の対象にして自己負担を求める制度は混合診療の拡大とも言え、保険給付範囲の縮小と特殊な保険適用外の治療選択を増やし、治療の格差を生じかねない。政府のシミュレーションでは、長期収載品が500円で後発医薬品が250円の場合、3割負担では1カ月約1500円、1年で約1万8000円の負担増、1割負担で1カ月で約1800円、1年で約2万2000円の負担増になる。当然、患者は後発医薬品を選択すると想定される。
 一方でこの制度は長期収載品を使用する場合には薬剤ごとに使用理由の記載が必要で、医療提供側にも多くの手間と時間を要する。後発医薬品は在庫不足になるリスクが高い現状を政府が理解しているとは思えない。この長期収載品の選定療養については協会でも今後議論する予定である。

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