医界寸評  PDF

 1994年6月、我が地区医師会総会で決議文を出したいと、会長から庶務担当の私に草案執筆の指示が出た。社会保障・医療関連問題での対政府・自治体への当然要求課題は別として、世界的問題は人口爆発・食糧難ですかと問うと、いや、むしろ我が国は少子高齢化に入り、地域での地場産業の衰退、就業・就職難から若年者・労働人口の大都市への流出で、人口減少、地域衰退の方向との回答意見であった▼30年後は2024年8月、某病院運営協議会に出席した。院長の報告講演では新型コロナ蔓延以降、救急受診・救急入院患者数の回復が思わしくなく、現在の病院救急応需体制の減退を心配し、復活画策実行中とのことであった。もちろん近隣地区での競合関係の増加の問題もあろう▼某市を中心とするY北医療圏4市3町に、今や、この少子高齢化・人口減少が生じてきた結果、対象患者の減少も生じたからではあるまいかと質問したが、高齢者の呼吸器疾患の救急受診の減少はないので、時期的にはまだそこに至るまいとの回答であった▼しかし、そうであっても、高齢者の粗死亡率は若年者のそれに比し高く、粗出生率も高くはないので、やがてはホモ・サピエンスの滅亡化社会を迎えるのかとも心配になった(原俊彦『サピエンス減少』(岩波新書新赤版1965))。(卯蛍)

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