主張 マイナ「だめなものはだめ」柔らかい精神を決して失わず  PDF

 このところ、自民党の総裁選挙がにぎやかである。私たち保険医は保険証廃止に反対であるが、約1年前から急にマイナンバーカード推進の流れが強くなった。総裁候補者の1人某デジタル大臣も、当然のように推し進めている。ここにきて、マイナンバーカードの不都合な点が世間に現れてきた。われわれ医師にとっても、開業医であれば、顔認証付きカードリーダーの申し込みに始まって、システム改修でオンライン資格確認の導入の端緒にたどり着き、かかった費用の補助金申請まで必要になる。この間の日程が非常にタイトで、アンテナを巧妙に張り巡らしていないと、ついうっかりして見逃し、補助金申請ができなかったり、申し込みができなかったりする。開業医にとって厳しい試練である。
 一方で、オンライン資格確認義務化はやかましく、いろいろな手段で異常に思えるほどに喧伝している。これは以前にも述べたが、国にとって政策上、何か余程都合の良い制度ではないか。本当に個人のためにつながるか、慎重に考えなければならない。国に個人の情報まで統制されてはたまらない。個人情報がICチップの解析で丸裸にされかねない。個人資産などの経済状態が筒抜けになり、悪用される可能性もある。そこは政府を信じてやってみようとされているが、今までの経験上、信用を裏切ることは当然あることで、危険な感じがする。国のために死ねと平気で国家が国民に命じた歴史がある。それから75余年しか経っていない。
 正直のところ、オンライン資格確認の導入のメールが連日押し寄せやかましい。もはやここにきて反対しても遅いかもしれないが、今こそ、保険医協会が一団となって、多少の不都合ぐらいと目をつぶることなく、もう一度振り返ってみる必要がある。最近テレビなどで、あれこんな人がといった特徴のある俳優を使って上手にマイナンバーカードを宣伝している。保険証の代わりになるとか、オンライン診療を推し進めてその資格確認に必須であるとか。当初、あると便利と宣伝されていたものが、ないと不便として事実上強制・義務化の流れにある。ここまで手を変え品を変え、政府が宣伝するからにはきっと何か裏がありはしないかと、つい危惧してしまう。国は個人情報を管理したいのである。保険医協会はこの個人情報の漏洩から身を守り、権利の保護を周知しなければならない。この考えを蔑ろにするシステムや風潮は残念ながら、今も連綿と続いている。
 今、私たちは柔らかい精神を失ってはいないか。ほぼ決まっていても、昔某政党の委員長が言ったように「だめなものはだめ」(あの頃は社会党も有意義で元気があった)と言い切りたいものである。

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