地球温暖化対策に原発増設、原発依存は不要
サウジアラビア政府は、イスラム教の聖地メッカで今年の6月、最高気温51・8℃に達する酷暑の影響で、180万人の巡礼者のうち1301人が死亡したと発表しました。地球温暖化による熱波による異常気象と考えられます。EUの気象機関は今年5月の世界の月平均気温は過去の平均を1・52℃上回り、過去最高だったと発表しました。世界気象機関(WMO)は2028年までの間に少なくとも1年は、世界の平均気温が産業革命前と比べて、80%の確率で1・5℃上昇する可能性が高いと予測しています。この傾向が続けば熱波や豪雨といった異常気象が増えるほか、海面上昇、海水温上昇、森林火災、干ばつ、砂漠化が進み、生態系が変化し、動植物は変化に対応できずに減少、絶滅する可能性があります。この5年間で世界の平均気温は地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」を超えることになります。地球温暖化の最大原因CO2の蓄積を抑制することが重要で、脱炭素を何としてでも推し進めなければなりません。化石燃料依存からの脱却が鍵となります。環境破壊、CO2排出の多いウクライナとガザで起きている二つの戦争も早く終わらせなければなりません。
現在、経産省は3年に一度見直す第7次エネルギー基本計画の検討を開始、1年かけて来年5月頃に閣議決定の予定としています。脱炭素には、大胆な省エネと再生可能エネルギーの拡大が鍵となります。日本の22年度の電源構成は火力に73%、原子力に6%を頼り、再エネは22%にとどまっています。第6次エネ計画では30年度の目標を火力41%、再エネ36〜38%、原子力20〜22%としています。
昨年ドバイで開かれたCOP28では、1・5℃の目標を掲げ、2030年までには世界で再エネ設備容量を3倍に、エネルギー効率を2倍にすることが採択されました。一方、2050年までに原発による設備容量を世界で3倍にするという宣言に日本を含む22カ国が賛同しました。原発は不安定で危険な上に経済性にも欠ける電源(再エネよりはるかにコスト高)であり、ウラン採掘から核燃料、運転、廃棄物処理、廃炉に至るまで環境を汚染し、人権を侵害します。
13年も経つ福島の原発事故がいまだ収束のめどが立たず、人々は今もその影響に苦しんでいます。元日には、大事故発生寸前の能登半島地震もありました。岸田首相は6月21日の記者会見で、物価対策を口実に、原発再稼働を進めると言及し、「安くて安定的なエネルギーの確保には、安全が確認された原発を速やかに再稼働させる。次世代型原子炉SMR(小型モジュール炉)の研究開発、実装を検討する」と発言しています。6月26日には大飯原発3、4号機再稼働が認可されました。新制度では原発は運転開始から、最長10年ごとに計画を審査し、60年超の運転が可能になっています。さらに新増設や建て替え(リプレース)、新型炉開発での原発回帰が政府の狙いです。今年の大手7電力会社の株主総会では、原発の再稼働について会社の姿勢が厳しく批判されました。第7次エネ計画の電源構成は、脱炭素を目指し原発、石炭火力はゼロにし、安全で、安価な再エネを50%以上にすることが求められます。原発増設、原発依存についてはしっかりと民意を問うべきです。
(環境対策委員 山本 昭郎)