ヒューマンエラー対策はシステムズアプローチで 医療安全講習会  PDF

 協会は「ヒューマンエラーの防止策―安全人間工学の立場から」をテーマに第3回医療安全講習会を4月20日にハイブリッド形式で開催した。講師は早稲田大学理工学術院創造理工学部経営システム工学科教授の小松原明哲氏。本講習会は全国の保険医協会・医会会員医療機関にも参加を呼びかけ、218人が参加した。

 小松原氏は、医療サービスは「良質の医療が、正しく提供される」必要があり、これが不十分であると医療事故につながるとして、今回は「正しく提供される」ためにはどうすればいいのかについて話していきたいと述べた。
エラー対策の
鍵とは
 業務提供プロセスにおける医療事故は多く報告されているが、その対策としてミスを起こした本人にフォーカスして注意喚起や教育訓練を行うパーソナルアプローチだけでは、安全は確保できないと言及。エラーが起こったことには他の要素があると考え、当事者を含む業務提供プロセス全体を注目するシステムズアプローチが重要と説明した。システムズアプローチとして、エラーが起こりにくい環境を整備することや、マニュアルが順守されない理由とその対策についても解説した。
注意力向上が
ミスを防ぐポイント
 さまざまな患者を診療し状況が常に変化する医療現場では、マニュアル通りの対応だけでは業務提供プロセスのミスはなくならないとし、状況に応じて、危険を見落とさない注意力が必要と述べた。人間の注意力をテストする実験動画を参加者に示し、人間は一つのことに注意を向けていると他のことが意識に上らなくなるため、現場では担当者を決めたり、状況変化を時々確認することなどで見落としを防ぐことができるとした。
 他にも、外観・名称が類似した薬剤の処方間違いなどのエラーは、無意識に判断し選択することで発生するため、指差し呼称によって意識的に選択することが有効とした。さらに、無意識の状態でも判断ミスが生じないように、外観・名称が類似したものは容器を替えたり整頓するなど、物理的な制約を行うことも重要と説明した。
 最後に、講習会で解説したテクニックが定着することで安全文化の醸成につながっていくと述べた。
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 本講習会の模様は期間限定で協会ホームページで公開しています。講習会では実際に発生した医療事故の原因と対策なども解説していますので、ぜひご覧いただき、医療安全研修に活用下さい。
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