先頃、24年3月の国家公務員共済組合のマイナ保険証の“利用率”が報道された。全体で5.73%(同年同月の全国民での利用率は5.47%)、組合(部署)別で上位が総務省10.31%、厚労省(第一)8.40%。下位は外務省4.50%、防衛省3.54%である。マイナ保険証の“登録率”は全体で59%(同年1月の全国民登録率は77.9%)、上位は厚労省(第一)の70.4%、下位は外務省の44.1%との実態である。政府お膝元の国家公務員でこの体たらくである。外務省や防衛省は特殊な勤務環境もあるが、国のインテリジェンスの中枢に近い部署ほど、情報セキュリティ上の危惧を抱いているとも読める。政府はこの5 7月を集中取組月間とし、医療機関に利用率に応じた支援金給付、テレビCM放送など補正予算の887億円を注ぎ込んでいる。余分なことはせず、権力を強制しやすい国家公務員だけを対象に登録率100%を目指したらどうか(まず隗より始めよ)。
日本のIT立国宣言から20年以上が経過した。当初は自治体の行政システムIT化による住民諸手続きの簡素化、効率化が目指され、同時に行政(中央省庁を含む)の政策決定過程の“見える化”も謳われていた。ところが、この間モリカケ問題や裏金問題をはじめ、幾多の不透明な政治がまかり通り、“見える化”看板はいつの間にか下ろされた。あくまで隠し通して時間を稼ぎ、国民が忘却するのを待っている。このような権力側の秘密隠蔽体質が日本のIT化を遅らせている一つの大きな要因である。
最近発表の会計検査院の22年度1800自治体調査で、自治体のマイナンバーシステム活用状況は調査した1258機能の内、利用ゼロは485機能(38.6%)。10%未満649機能との合計は実に90.1%。しかも本来簡略化(ワンストップ)が目指された手続きも実際には紙の添付書類(課税証明等)が必要で、かえって自治体窓口業務負担が大きくなっているケースがあると指摘されている。「何でもかんでもIT化」のおねだりの不都合な真実が隠れている。
医療DXの目玉である“全国医療情報プラットフォーム”も当初(19年)の簡素な厚労省原案から、あれもこれも「できたら便利」と詰め込まれ肥大化していった。その分セキュリティ対策システム追加等でグロテスク化している。身の丈にあった医療に限定したプラットフォーム、データベースの中で、強固なセキュリティを施しながら確実な成功事例を積み重ねていくところから始めるべきである(まず隗より始めよ)。本当に良いものならスマホのように義務化せずとも普及する。マイナ保険証義務化は撤回すべきである。
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