「質の高い医療の実現」強調する医療DXをどう捉えているか2023年度地区懇アンケート  PDF

 政府は「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられ、質の高い医療の実現につながる」とメリットを強調してマイナ保険証をはじめ「医療DX」に邁進している。文字通りのメリットを享受できるなら歓迎すべきところだが、その具体的なイメージについて個々の受け止めは異なるようだ。
 協会は「医療DX」の狙いを、個人の医療情報を民間企業に利活用させ、「健康・医療のビジネス化」を加速させることによる「経済成長」と、国家による医療・健康情報把握により医療費抑制政策をさらに展開させるものと指摘。その内容は、患者の医療情報の「共有化」とその「利活用」のために設計されていると考えている。加えて個人情報保護に危惧を抱いている。国の進める医療DXは医療者が望む方向に向かっているのか、医療情報の連携が患者のためになされるにはいかにあるべきかの観点から、協会は提言をまとめ、さらに議論していくために「たたき台」として1月に公表した。
 23年11月から24年2月に開催した各地区医師会との懇談会で関連する報告を行い、合わせて会員アンケートを実施。対象者2226人のうち418人から回答(19%)があった。
閲覧期間が
限られても「有用」
 マイナ保険証で医師が閲覧できる診療/薬剤情報が反映されるのは「最短で1カ月半」(23年7月5日閉会中審査で当時の加藤厚労相)とされていることについては、「ある程度有用」39%と「診療には役立たない」35%がほぼ並んだが、「十分有用」は2%にすぎず、「分からない」も24%に上った(図1)。
 マイナ保険証で医師が閲覧できるのは、診療/薬剤情報が「21年9月以降に診療したものから3年分」、特定健診情報が「20年度以降に実施したものから5年分」とされていることにも同じ質問をした。こちらは「ある程度有用」が57%に上がり、「十分有用」も8%となる一方、「役立たない」は14%に下がった。「分からない」は21%であった(図2)。
 両問とも、もう一つ選択肢がほしかったとのご意見があったことから、4地区で追加質問として「あまり役立たない」が選択肢にあれば選んでいたかを聞き、その割合を全体に当てはめた数値も出した。前者は「役立たない」「あまり役立たない」45%に対し「ある程度有用」「十分有用」34%となった(図1 )。後者は、「役立たない」「あまり役立たない」が27%、「ある程度有用」「十分有用」が57%となった(図2 )それぞれ「役立たない」群にシフトしており、「分からない」からも若干動いている。
患者情報の
閲覧範囲は拮抗
 患者には医師にも知られたくない情報もあるため、閲覧できる情報を選択できることが必要だと協会の考えを示した上で閲覧すべきかどうかを聞いた。「患者が知られたくない情報まで閲覧すべきでない」43%、「治療に必要なら閲覧すべき」42%と意見が拮抗した(図3)。
74%が民間への
利活用を否定
 患者情報の利活用は、「医学のための活用に限定して民間の健康産業に利活用させるべきでない」が74%と「民間の健康産業にも利活用させるべき」6%を大きく上回った(図4)。
 協会は今回のアンケート内容を踏まえ、国等への要請を進めていく。

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