精神療法料がまたもや減額 精神科 中嶋 章作
今回の改定では「精神疾患を有する者の地域移行・地域定着に向けた重点的支援」とあり、地域精神医療を支える精神科診療所の評価がなされるものと思いきや、その内容が公表された際には、これまでにない動揺、困惑が関係者の間に広がった。2年前の改定と同様に外来精神科医療の主たる収入である精神療法料の度重なる減額、そして診療の質とは本来は無関係である精神保健指定医と非指定医との療法料格差が再度広げられたのである。精神保健指定医はご承知のように精神医療での措置入院に係る措置診察、医療保護入院、鑑定業務、さらには身体拘束などの際の人権に関わる判断、責任を負う資格を有したものであり、この資格の有無は日常的な精神療法の技術評価をする基準とは無関係である。精神療法・治療の質を問うならば精神科専門医資格の有無が妥当である。
また、この通院・在宅精神療法に関して、今回からその実施時間を10分単位で診療録、診療報酬明細書に記載しなければならないなど精神療法の質を精神療法実施時間30分未満の適正化、60分以上の充実などと時間軸で評価する流れがつくられた。この一連の減額措置に対応して早期診療体制充実加算という名目が新設され、求められる施設基準を満たせばあたかも減額分を補填できるような説明がなされている。しかし、その施設基準、算定要件を見ると、詳細はここでは割愛するが、ほとんどの精神科診療所で届出困難な厳しい内容となっている。また、日本精神神経科診療所協会雑誌の最新号の一論文では、仮に早期診療体制充実加算を得たとしても、逆に減収となってしまう試算がなされている。
さらに従来の療養生活継続支援加算について、療養生活環境整備指導加算を統合して在宅精神療法を算定する患者にも拡大されることになった。しかし、これもこの支援専任の精神保健福祉士が1人以上勤務していることなどの施設基準が変わっておらず、多くの診療所で請求が困難となっている。
精神疾患が地域医療計画の5疾病・6事業に入って久しいが、今回の改定を見ると、国の考える施策に同調したくても、経営上不採算となり関与できない診療所がほとんどとなってしまい、我々自身も今後の特に外来精神医療のあるべき方向性が見えなくなってしまったといえば言い過ぎだろうか。
精神科医療の主たる報酬部分である通院・在宅精神療法料の前回改定からの相次ぐ減額は、まず一般病院の精神科部門の不採算を一層に煽り、精神科外来の廃止に拍車をかけることになる。また、今後に期待する若手による新規の精神科診療所開設も困難になるものと予想される。
病院皮膚科の労力が反映皮膚科 谷岡 未樹
今回の改定では、開業している皮膚科の点数に大きな増減はなかった。爪甲除去(麻酔を要しないもの)が10点増点したくらいであった。全科の基本的診療に対する評価として初診料、再診料が増点されたが、開業皮膚科が日常診療で行っている基本的な処置や手術に対しても最近の物価高騰に配慮した増点があってもしかるべきと思われた。
病院皮膚科においては、高度な医療を行っている点を反映した改定点があった。処置点数は病院皮膚科で行う大きめの処置点数が増点された。病院皮膚科の労力に見合う増点であった。
熱傷処置のうち500cm2以上の処置、局所陰圧閉鎖療法のうち200cm2以上が大幅に増点された。
手術領域においても病院皮膚科で行う大きめの手術の点数が大幅に増点された。
創傷処理の筋肉臓器に達するもの(長径10cm以上)、小児創傷処理の(長径5cm以上)、皮膚切開の長径20cm以上、皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)の長径6cm以上等である。こちらも、大きな処置を行う病院皮膚科には朗報である。
また、皮弁作成術の25cm2未満の増点は、手術手技への評価から妥当である。
これまで慢性膿皮症手術は定型の保険点数がなかったが、今回新設された。こちらも病院皮膚科の診療の適正化につながろう。
まとめると、今回の改定では開業皮膚科には目立った変更点はなかった。病院皮膚科の高度な医療処置、手術については増点が認められたことは良い傾向である。今後も、日常診療の実態を反映した診療報酬改定が期待される。