2024診療報酬改定こうみる6  PDF

カウンセリング料が増点
小児科 松尾 敏
 会員の皆さまは、新型コロナの流行と出生数の激減で外来患者が減っているのに、新型コロナ関連の臨時的な加算がたくさんついたおかげで、発熱外来をしていた医療機関は保険点数が新型コロナ前よりも増えていたことを経験されていたと思います。しかし、新型コロナ関連の加算も徐々に減っていき、ついに今回の改定では、今まで小児科外来診療料を請求時でも算定可能であったSARS-COV-2抗原定性が算定不可となってしまいました。実は、これまでSARS-COV-2抗原定性のみならず、SARS-COV-2・インフルエンザ抗原同時検出定性とSARS-COV-2・RSウイルス抗原同時検出定性も、小児科外来診療料を請求時でも算定可能であったことで、非常に診療に幅が出ていたのが、算定不可になってしまい、残念に感じています。
 今改定の評価できる点を述べさせていただきます。まず小児特定疾患カウンセリング料の増点です。初回は800点になり、また4年まで算定可能となりました。さらに過去にカウンセリングを受けたことがある場合であって、当該カウンセリングを受けた症状および疾病などにかかる治療が終了後、再度治療が終了した症状および疾病等と異なる症状および疾病により受診し、カウンセリングを受ける必要があると医師が判断する場合には、再度初回の800点から算定可能との連絡もあったようです。子どもたちはいったん良くなっても、年代によって別の問題が起こり、カウンセリングを再度始めることはよくあります。点数アップと期間延長に、再開カウンセリングも認められたのは、こころの問題に対応する医療の重要性を保険診療で認められたと考えられ、評価できる内容です。
 次に、小児科でも算定できる新しい加算がいくつかあるのも評価できます。医療情報取得加算、医療DX推進体制整備加算、外来感染対策向上加算に加え、発熱患者等対応加算、抗菌薬適正使用体制加算などが新たに算定できるようになりました。それぞれ算定条件は複雑なものもありますが、小児科外来診療料でも算定可能な点は評価できます。コロナの加点点数と比べると少ない加点ですが、評価できます。
 問題点は複雑すぎる算定要件のものが多いことです。ベースアップ評価料はその最たるものですが、私には解説は不可能です。また、小児抗菌薬適正使用支援加算の算定にインフルエンザ感染が疑われる患者では算定できないのは、今までもおかしい決まりと感じていましたが、今回さらに新型コロナの患者または新型コロナが疑われる患者についても算定できなくなったのは大問題でしょう。毎回新たなウイルス感染症を加えていくなら、ウイルス感染症を疑われる全ての患者では算定できなくなり、この加算は誰も算定できなくなるでしょう。全く医療を分かっていない人が作成しているとしか思えません。対抗するには、ウイルス感染を疑っても病名には付けないで、小児抗菌薬適正使用支援加算を算定することです。

手術実施の医院で減収影響
眼科 辻 俊明
 A400短期滞在手術等基本料1(日帰りの場合)、水晶体再建術において入院以外で麻酔を伴う手術を行った場合以外では1359点になった。これはもともと2718点であったものである。つまり半額になった。
 A400短期滞在手術等基本料3が両眼と片眼に分かれた。これはもともと日本眼科医会が要望していたものである。2022年度改定では両眼でマイナス6.6%の減額、片眼でマイナス10.0%の減額であったが、今次改定では両眼マイナス1.3%減額、片眼マイナス2.4%減額となった。減額幅は少々減少したとも言える。
 この改定により、短期滞在手術等基本料3の水晶体再建術(眼内レンズ挿入)の医療費は年間4億円の減額となる試算がある。
 眼底三次元画像解析が200点から190点に引き下げられた。この引き下げは一般開業医にとっては大きな打撃になる。眼底三次元画像解析は2008年から16年間ずっと200点であった。昨今の機器の普及により、2022年では年間医療費が400億円にまで膨れ上がったことが引き下げられた一因との見方がある。今回の引き下げで年間20億円の眼科医療費が削減されるという試算がある。
 眼球内容除去術など七つの手術で診療報酬は引き上げられた。しかし、これらは日本全国でも年間数千件しかなされていない手術である。したがって点数が上がった手術により増加する眼科の医療費はごくわずかである。
 診療報酬が上がった注射もある。しかしこれにより増加する眼科の医療費はごくわずかである。
 DPCも短期滞在手術等基本料3も包括医療である。これらが引き下げられると、それを補うために医療機関は人件費を下げるなどの経営努力を強いられる。
 短期滞在手術等基本料3の水晶体再建術を算定しているのは、DPC以外の小規模病院であり、これらの病院を受診するのは、 通院治療できる病院が近隣にない 高齢のため全身合併症があり、手術の際は他科の併診が必要 独居であり、付き添いがいないため通院ができない―などの患者である。これらの患者を受け入れている地方の病院は不採算のために手術を止めざるを得ない状況に追い込まれる可能性が危惧される。すなわち医学的・社会的に白内障の入院手術の必要性がある患者を受け入れている地方の病院に痛手が大きいのである。
 政府は病床コントロールを強める地域医療構想を推し進めようとしている。同基本料3の改定は政府の思惑と連動していると考えることもできる。

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