2024診療報酬こうみる3  PDF

内科系中心に診療報酬削減
内科 顧問 関 浩

 今回改定に向け、中医協で外来管理加算の廃止や特定疾患療養管理料の算定要件見直しが議論されたり、財務省からの“診療所の利益率は高水準”との意図的な打ち出し、財政制度等審議会で診療所の報酬単価5・5%引き下げを提起するなどあからさまな医療費削減の下地作りがなされてきた。
 出てきた改定率は診療報酬本体プラス0.88%とされるが薬価と材料のマイナス1%を勘案したネットの改定率はマイナス0.12%となった。特定疾患処方管理加算1(18点)が廃止され、影響は大きい。従来の加算2だけが残ったが、点数は10点マイナスの56点に引き下げられた。特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病・高血圧症・脂質異常症が除外され、生活習慣病管理料 に移行を促すとされる。特定疾患療養管理料、同処方管理料の対象疾患の9割がこの3疾患であり、この3疾患除外で、改定率でマイナス0.25%、医療費ベースで1200億円相当の大幅削減が推計される。具体的に外来管理加算は包括され、特定疾患処方管理加算も算定できず、月1回の受診では16点、月2回の受診では269点もの大幅マイナスとなるのである。小幅な初診料(プラス3点)・再診料(プラス2点)の引き上げだけでは焼け石に水といえよう。
 その他、外来後発医薬品使用体制加算、一般名処方加算が引き上げられたが、ともに施設基準を満たすことが要求されている。処方箋料は減額され、10月1日から様式が変更されることになった。
 検体検査料のうち血液化学検査・腫瘍マーカー・SARS-Cov・SARS-Cov+Flu などが引き下げられたが、血液採取(静脈)・皮内・皮下および筋肉内注射・静脈内注射・点滴注射は小幅の引き上げにとどまった。今回改定は実質マイナス改定であり、診療所・中小病院の外来診療に多大の影響を与えるものといえよう。
 特定疾患療養管理料はもともと、「プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価」した点数とされる。一方、生活習慣病管理料は「生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合」に算定され、初回およびおおむね4月に1回以上は患者への説明、署名を得た療養計画書の作成、写しのカルテへの添付などが要求される。本管理料は月に1回しか算定できず、悪性腫瘍特異物質治療管理料などのほとんどの医学管理料と外来管理加算が包括される。
 このように内科的技術料である医学管理料の多くを包括している点からいって、外来の疾患別マルメ点数、診断群分類別定額支払制の性格を強く持っている。生活習慣病管理料は長期処方・リフィル処方ひいては受診回数減につながっていく。
 主に生活習慣病管理料 について述べたが、懸念すべきは今回の3疾患のみならず将来には他疾患への拡大の恐れがあり、特定疾患療養管理料が形骸化し、廃止に向かうことである。

区分細分化で締め付け一層
在宅医療 理事 吉河 正人

 在宅医療についても、今次診療報酬改定の全体の流れである医療費抑制、かかりつけ医制度の推進、医療DXによる連携体制構築の推進に則った改定となっている。
 積年の要望事項である「在宅時医学総合管理料の単一建物診療患者数による逓減撤廃」は、実現するどころか人数区分の細分化によるさらなる締め付けがなされた。同時に、訪問診療回数が一定数を超えた場合の減算規定が新設され、在宅専門医療機関の増加に対すると思われる全体への網掛け規制が行われた。
 往診料にも「一見さんお断り」を誘導するかのように、かかりつけあるいは連携医療機関の患者以外に対する緊急の往診加算が減点された。この方たちには「救急車を呼んで救急病院へ行って下さい」と言うのか。救急医療の逼迫が問題となっているというのに、まさに逆行する。
 他の医療機関や多職種、介護保険施設との連携が重要なものであるのは重々承知している。「往診時医療情報連携加算」「介護保険施設等連携往診加算」「往診料における在宅ターミナル加算・看取り加算」の新設は一定評価できる。しかし、その他の医療DXによる諸加算を含め、マイナンバーカード認証でのトラブル多発に代表される情報共有システムのお粗末な現状が改善されない限り、使い物にならない。特に医療・介護の資源が乏しい地域においては、連携の重要性を認識していようと実現困難である。こうした地域では数少ない医師が多様な役割をこなさざるを得ず、医療機関と介護施設の代表者を兼ねる場合も少なからずある。特別な関係としての算定制限は、身を削って奮闘するこれらの医師にとってモチベーション低下要因以外の何ものでもない。
 医師偏在是正を謳うなら、相も変わらぬ大都市圏での視点による机上の計算に終始せず、少数勢力である現場の声を反映する姿勢を打ち出してもらいたい。

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