環境問題を考える 165  PDF

EVシフトは夢物語だった…

 以前この紙面で、欧米や中国などの強引で極端なEVシフトの疑問点を挙げたことがありましが、やはりその後の拙速な普及により多くの問題点が顕現してきました。未来は暗澹としているようで、それはテスラ・フォルクスワーゲングループ・中国や韓国のメーカー等の著しい株価下落に如実に現れています。大企業は巨額の投資回収目的で、ハイブリッドを含むEVベストミックスを目指すでしょう。しかし、電池などに余程の技術的革新が無い限り、EV(特にBEV)が主流になることはないと考えます。
 EVシフトの問題点を挙げておきます。
1 環境面
 リチウムイオン電池(以下LIB)原材料のレアメタル採掘・精錬時の環境汚染が重大。
 レアメタル産地の多くは政情の安定しない国や地域に局在しており、労働者の人権的な問題も多い。
 LIBはリサイクル困難で資源の回収が困難。安易な廃棄が多大な環境汚染となっている。
 重い車体重量はタイヤの摩耗が早く、合成ゴムの微粒子が新たな環境汚染(マイクロプラスチック汚染)として注目されている。当然ブレーキなどの劣化も早く、道路や駐車施設に対する負荷も無視できない。
 通常使用期間程度では総合のCO2収支は明らかにプラスである。
2 経済面
 ランニングコストが電気料金に依存する。
 現状大半の国で電力生産は化石燃料に頼らざるを得ない。水力発電が主力のノルウェーでも、過度なEV化により急激な電気使用料金の上昇が見られた。
 LIBは熱膨張・自然発火などの事故リスクがある。
 よって保管・輸送にも難あり(大量のドイツ高級車を積載した運搬船の火災沈没事例、一部フェリー会社のEVの積載拒否などで保険料の上昇)。
 エコカー補助があっても高価である。
 政府補助金も世界的に先細りであり、改良余地満載のEVはコストベネフィットに劣る。
 レアメタル原材料の供給が需要に追い付かず資源枯渇問題もある。これは価格上昇につながる。
 アフターサービスが不十分で、修理は困難かつ極めて高価である。リセールバリューは極めて低い。
 もし順調に生産されると組み立て工員など大量の雇用消失が予想される。
3 実使用面
 航続距離が電池容量に依存し、現状では短い。また充電施設が足らず、長い充電時間を必要とする。
 寒冷時の機能低下が著しい(厳冬期の電欠は命に関わる。欧米・中国などでは凍死例あり)。
 車体重量が重くなるためタイヤ着脱が頻回で大変、摩耗粉塵による健康被害も考えられる。
4 技術面
 多種多様な技術的改善要素があり、特に現在の駆動用電池LIBはエネルギー密度が化石燃料に比べ極めて低く、車体重量が増えざるを得ない。新型駆動用電池開発中も実用化・事業化には時間を要する。
◇   ◇
 EVは走行使用のみではCO2排出は微小で、地球温暖化にも寄与するとされています。
 しかし私は前述の理由により、現状では総合的には明らかな環境負荷・破壊そのものであると考えます。
 これは運転時にはCO2を排出しないとして、運転が再開・延長されている原子力発電所に等しい存在なのでは? まだ政府はいずれも推進していますが…。
(環境対策委員長 武田信英)

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