環境対策委員会提言 環境対策委員 山本 昭郎
小林製薬が製造した紅麹を使ったサプリメント「紅麹コレステヘルプ」などによる健康被害が発生しました。2024年4月14日現在で死者5人、入院して治療した人は延べ231人、同社への相談件数は約8万件に上っています。
環境対策委員会は23年8月26日、内閣府食品安全委員会委員・脇昌子氏を講師に「健康食品のチェックポイントを知ろう」の食の安全問題講演会を開催しました。「健康食品」は「医薬品」と異なり、@成分量や品質は製造者の責任A摂るかどうかは消費者自身が自己選択B有害事象も有効性も消費者が自己評価―であることです。保健機能食品には、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品(「特保」)があり、この中で有効性と安全性を国が審査して個別に表示を許可(緩い規格基準)するのは「特保」のみで、機能性表示食品は保健機能についてその根拠の情報を国へ届け出ることで表示許可が得られるものです。管轄は消費者庁で、「健康食品」の情報発信等は内閣府食品安全委員会が、健康被害の対応については消費者庁・厚生労働省が行っていることを学びました。
企業任せの安全評価
今回の健康被害を起こした「紅麹コレステヘルプ」は機能性表示食品に属し、安全性の審査はなされていません。安全性の評価については企業任せになっています。コレステロール合成を阻害する薬剤「スタチン系」が、青カビやコウジカビから発見され商品化されています。したがって紅麹にはコレステロールを下げる作用はあると思われますが、「シトリニン」という腎障害を引き起こす物質が含まれることがあり、10年前から欧州で警告されています。ただ今回の調査で紅麹製造中に青カビから未知の物質「プベルル酸」が見つかっていますが、因果関係については不明です。
健康被害の方の多くが「ファンコニー症候群」(近位尿細管の機能異常により、糖、アミノ酸、リン、重炭酸塩などの再吸収障害により、筋力低下、倦怠感、脱水などを起こす。尿細管性アシドーシス、低リン血症、低カリウム血症、進行すると腎不全を起こす)を呈するとされています。診断は腎機能の異常、糖尿(血糖値は正常)、リン酸尿およびアミノ酸尿などを示すことです。
安全性を軽視した成長戦略
2015年4月に規制緩和による成長戦略として健康食品の機能性表示を解禁する制度が企業の要請で導入されました。「機能性表示食品」の安全性については「企業等が自ら評価を行うことが適当」として安全評価を企業に任せきりにしています。さらに商品の効果を煽るマスメディア広告で、大規模で重大な健康被害が生じたと思われます。
こういった健康被害を防ぐためには、認可を消費者庁から厚生労働省(私見ですが、以前のように厚生省と労働省は分離すべき)へ移管し、食品安全委員会の権限を強化、「健康食品」の効果と安全性の基準を厳密にし、誇大広告を制限、被害者への救済・補償制度の確立、服用前に医師に相談するなどの対策を講ずるべきと考えます。
野放し「健康食品」で死者まで招いた国の責任は大きく、二度と繰り返さないために、医療関係者・団体からも強く国に働きかけることが求められています。