乗り鉄ドクの趣楽悠遊 vol.17 村上 匡孝(綴喜)  PDF

やくも 国鉄時代のパノラマ先頭車両に乗る
やみくもにやくもに乗りに行ったお話 (JR西日本)

 「八や雲くも立つ出いづ雲も八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を」須佐之男命すさのおのみことの古事記の歌由来の由緒ある名の特急「やくも」。1972年に181系気動車で運行開始した山陽瀬戸内(岡山)と山陰(米子、出雲)を結ぶ、伯備線の中国地方横断特急です。1982年から381系振り子電車となり、2024年の春から新型273系車両となりました。川沿いと山越えのカーブが多い伯備線は、私が子どもの頃は“高梁川の鉄橋のデゴイチ3重連”で知られ、今もさまざまな色の381系やくもが撮り鉄に人気です。スーパービューとして中央本線のしなのや紀勢本線のくろしおで走っていた、パノラマ前方展望車両一編成(スーパーやくも)に、引退前の乗り納めをしてまいりました(写真1、2)。先頭の1号車は“乗り鉄”で満席ですが、“極聖雄町純米吟醸”を手に前方展望を楽しむ“呑み鉄”の私。国鉄カラーのやくもとすれ違う時には前に“撮り鉄”が群がります(写真3)。高梁川、石灰岩の岩山、車窓は川から山、分水嶺を越えて川沿いを下ると、里の車窓には大山の雄姿が…。旅情に浸るうちに米子駅に着きました。昔の機関区、今の車両区。山陰線、伯備線、境港線の気動車車両をホームから鑑賞します。
 上り下りと入っては出て行くいろいろな色のやくもを見送っていると、デビュー前の車上型制御付自然振り子方式273系新型やくも、ブロンズ色に輝くピッカピカの新車がそこに(写真4)。宍道湖に沈む夕陽の鬱う金こん色、多々羅製鉄の黄こ金がね色、大山夏山開き祭の松明のような銅あかがね色、赤瓦の街並みの赤銅しゃくどう色という四つのブロンズをベースに作られた“やくもブロンズ”です。米子で途中下車して旨い魚と美味い酒の昼餉ののち城下町を散歩すれば、現存する日本最古のイギリス製四輪木製三等客車(1887年製)などの鉄道遺産に出会えました。
 今回の推し地酒。きもと純米吟醸十旭日じゅうじあさひ改良雄町(旭日酒造、島根)。
(381系やくもパノラマ車両、2024年3月乗)

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