勤務医と病院経営に資する情報提供と保険医協会の事業紹介を目的に、協会は2月21日、勤務医のための講習会をウェブで開催。府内病院勤務医13人が参加した。
講習会は上田和茂理事が進行。曽我部俊介理事より、協会活動の柱4点@医療制度・診療報酬改善に向けた活動A医師とご家族の生活を守る共済制度の取扱いB保険診療のサポート(新点数説明会・保険講習会等の開催、保険請求の照会対応、診療報酬の情報提供、日常診療に役立つ書籍の発行)C医業経営のサポート(医療安全講習会・接遇研修等の開催)―を紹介。その上で国民皆保険制度を守り、地域医療を守る活動への協力をお願いした。
共済制度では特に「医師賠償責任保険」のサポート力、「斡旋融資制度」の低い利率と使いやすさを紹介後に「グループ保険」と「保険医年金」の特長点を詳説。入会と共済制度や事業の利用を呼びかけた。
「勤務医の先生気を付けて下さい!知らない間に医事紛争拡大のきっかけを作ってますよ!」と題して名倉良一監事(医療事故案件調査委員)は、@医師賠償責任保険の運用・紛争解決の流れA前医批判と採血による神経損傷が疑われる患者の「診断名」で実際に相談を受けた事例を解説した。
協会は全国に先駆けて1968年に医師賠償責任保険を導入し、取扱件数は数千件、解決率98・3%(23年5月末時点)。損害賠償が生じる3条件「@過失があるA損害が発生しているB過失と損害の間に因果関係がある」を挙げ、医療事故が発生し医療機関側に過失があったとしても、イコール賠償責任が生じるわけではないと説明した。
「前医批判」が原因で医事紛争になった具体的事例等を紹介した。後医の発言は悪意がなく無意識としても、患者は前医に不信感を抱き、責任追及や賠償請求につながると指摘。根拠のない前医批判は患者にも有害であり、医事紛争のきっかけとなり、拡大させる可能性があることを認識してほしいと述べた。
採血による神経損傷が疑われる患者の診断書(名)について、「患者の訴えのみ」で安易に正中神経損傷や複合性局所疼痛症候群(CRPS)と診断せず、「採血後疼痛」などの症状名に留めて経過観察し、できるだけ患者の不安を取り除く。紛争拡大防止のため、診断時には十分な配慮が必要と注意喚起した。
質疑応答では正中神経損傷に係る訴訟の経過や神経障害でのトラブル、患者を送る側の注意点―に回答した。参加者からは「良い気づきにつながった」「具体的内容で画像も良く理解しやすかった」などの感想が寄せられた。